設計と施工 (4)

5 設計事務所に頼む

この方法を選ばれた方が僕の事務所のお客さんになるわけです。

実は一口に設計事務所といっても、様々な仕事の業態があります。僕のところのように、住宅を望まれる個人の方から、直接仕事の依頼を受けるところばかりではありません。前にもお話しましたが、建設会社の下請けとして設計図を書いたり、確認申請業務だけを行ったり、同業者の手伝いをしたり、と様々です。ここでは僕のところのような設計事務所を念頭に、お話してみたいと思います。

そのメリットは何といっても、優秀な設計事務所であれば、設計の質の高い建物を望める事でしょう。前にもお話したように、設計者は設計する事が大好きです。よりレベルの高い建築を創るために努力は惜しまないのです。お金を度外視して、そこに可能な限りの時間を掛ける人がほとんどでしょう。そして、そこに質の高い建築が生まれてくるのです。

そして二つ目のメリットは、施工やコストに関して中立性の高いチェックが行われる事です。それらに対する知識は、若く未熟な設計者では経験豊かな現場監督にはとうてい歯が立ちません。それでも、その中立性は揺るぎないものなのです。独立性の高い善良な設計者であれば、多少未熟であったとしても、その存在は大きな意味を持っているのです。

ただ、この方法にもデメリットはあります。中でも一番大きな問題は、やはり、価格確定にともなうトラブルのリスクでしょう。もちろん、工事期間中や完成後も様々なトラブルは発生します。「塗装が汚い。床鳴りがする。雨が漏れる。傷がある。」 といった施工不良によるものや、「天井が低い。廊下が狭い。収納が少ない。」 といった設計不備や説明不足によるもの等々。様々な不満が生じる可能性があります。僕のところでは今のところありませんが、それらの問題が大きなトラブルに発展したケースを他の事務所から聞く事があります。ただ、これらの問題は建売住宅を購入する以外、どんな場合も契約時には現物がないわけですから、同じように起きる可能性はあるわけです。

しかし、価格確定に関するトラブルは、設計事務所に依頼するという方法そのものが持つ特徴的なリスクといえるでしょう。つまり、価格は実施図面という詳しい図面が出来た後に、まったく他者である施工会社が見積もりをして初めて確定するのです。そのため、そこに予算オーバーという大きな問題が生じる可能性があるのです。これもまた僕の事務所ではトラブルになった事はありませんが、経験未熟な設計者が起こしやすい問題のひとつです。

ほとんどの設計士は良心的で、より良い建築を作ろうと努力していると思います。ただ、その能力や経験不足によるトラブルが発生しているのも事実なのです。

今までお話した1から5までの比較は非常に観念的なものです。建売業者、ハウスメーカー、大工、建設会社、設計事務所、現実にはこれらの業種全てに様々な能力の会社や個人が存在していますので、これらを単純に比較する事はできないでしょう。どこに依頼するか決める際の、ちょっとした参考程度にしていただければ幸いです。

家は普通の人にとっては、一生に一度の大きな買い物です。新車を買う時は誰でもカタログを見ながら、納得いくまで思い悩むはずです。家の価格は車とは一桁違います。車の十倍ぐらい、じっくり検討してみてください。

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