SU邸

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この住宅は矢作川沿いの小さな鎮守の森を囲んだ、小さな部落の中にあります。
住人は若いご夫婦と子供2人、そして、奥さんの母親の3世代5人家族です。

敷地は非常にやわらかな地盤でしたが、ご主人はコンクリートの住宅をご希望でした。コストを抑えるため、建物をシンプルな平屋の箱型として杭をなくし、隣地との土留の工事をなくすため、建物を敷地のほぼ中央に配置しました。
妻の母親と同居する2世帯家族は、夫の親と同居する場合に比べ一般に摩擦が生じにくいようです。そのため、2世帯住宅とはいえ、やわらかく結びつきしかも分離する、そんな平面構成を目指しました。

長く部落に暮した母親のプライベートなゾーンは、部落に開いた東側の庭に対面させ、若夫婦家族のプライベートなゾーンは、閉じた南側の庭に対面させました。料理でお客をもてなすのがお好きなご主人のパブリックな接客スペースは、来客用の玄関と連続させました。そして、それらを結ぶ中間領域としての居間。これら4つのゾーンはそれらを仕切る4枚の引戸で分離し、そして結びつきます。これらのスペースは南側の濡れ縁とも結ばれ、単純な区割りの平面構成の中に回遊性と多くのシーンの重なり合いを生み出します。 そして、南側の庭と結ばれた屋上もこの建物の重要な要素の1つです。当初ご主人のご要望で作られたいくつもの中庭の案は、ある時突然逆転し、建物が中央に配置され、コートは屋上へとおしやられました。そして、高いパラペットに囲まれたプライバシーの高い、中空に宙いたコートとなりました。

内部に使われたチークの板は、コンクリートとともにその存在感を空間に表出してきます。物質の存在感を全面に押し出そうと思い始めたのは、建築に造詣の深いご主人の嗜好もありますが、何度も足を運んだこの古い部落の持つ土や血の匂いのせいかも知れません。極限まで要素を削ぎ落とした四角いコンクリートの外観は、廻りの民家や畑、そして、数軒のプレファブ住宅の中に、埋没しない強さを持っています。しかし、物質としての存在感だけを発するそのコンクリートの表情は、廻りの畑の土の様に、この部落になじんでいく様な気がしています。