建築は色とりどりの糸を幾重にも織り重ねて出来る一枚の布に例える事が出来ます。
材料、デザイン、構造、法規、経済性、社会性、歴史性等々、無数の糸で織り上がったいくつもの層は互いに独立する事なく、 複雑にからみ合いながら、1枚の布に様々な風合を与えます。建築家はその中の何本かの糸や織り方にこだわりながら、 独自の布を織り上げていきます。

また、建築を1つの書物に例えるなら、単語の羅列の中に様々な意味や作者の美意識などを読み解く事が出来る様に、 建築もまた表面に表れたデザインの奥に建築家の様々な思いを読み解く事が出来ます。きれいな単語や文体によって明快なテーマを発する心地よい文章(建築)よりも、意味深な単語や文体、単純には読み解く事の出来ないテーマ、 しかし何故か心を打つ、そんな匂いたつ様な文章(建築)に私達は魅力を感じます。

そして、時間を経る程に味わいを深めていく、そんな建築を作りたいと願っています。