くれ縁(内縁)は作った事がありませんが、濡れ縁(外縁)は今までにたくさん作ってきました。
くれ縁、濡れ縁、ウッドデッキ、ベランダ、バルコニー、それらの厳格な違いはさておき、外部と内部との中間領域でもあるこの場所は僕が建築を作る上で大変重要なツールとなっています。
僕の自邸にも2階の小さな和室(居間)の前に、杉の足場板で作った黒い濡れ縁があります。巾2m30cm 奥行き3m 程の小さな濡れ縁ですが、内部空間にとって大変重要な役目を担っています。それが狭い内部に広がりを与えているのも確かですが、外部の気配を直接感じさせないーダイレクトに外部空間が流れ込んでこないーそんな感じがして、室内に落ち着きを与えているのです。以前この濡れ縁は2方向にほぼ立ち上がり(手摺、塀等)のない、外部に対しわりとオープンなスペースでした。それを数年前にオープン部分を高さ1メートル40cm程の板塀で3分の2程囲う事により、かなり閉鎖的なスペースにしたのです。これによりこの場所は以前より内部化し、内部空間とより緊密に繋がったのです。和室と濡れ縁の間のサッシは巾1m40cmしかありませんが、一本の大きな引き込み戸になっていますので、ここを完全に開放するとかなりな一体感が生まれるのです。
内部と一体化した内部的空間、僕の自邸の濡れ縁はそんな感じです。
蓼科の山荘(兄の別荘)にも巾8m 奥行き4m 程の大きなウッドデッキがあります。毎年行く度にバーベキューをするこの場所は、僕の自邸のものとは違い、完全に外部と言ったほうがよいような空間です。建物とそれに直行するコンクリート壁に面する部分以外は一切立ち上がりのないオープンな空間で、内部とは巾1m10cm の引戸で繋がっているだけです。この戸はバーベキューの給仕用としては十分ですが、空間の一体感を作り出すには少し物足りません。本当はもっと大きな引戸にしたかったのですが、建設地が標高1400mの寒冷地であり、予算の関係上機密性の低い木製の引戸を使う事になったため、開口巾を抑えることにしたのです。それでも、白樺林に繋がる庭先と一体となり、そこで遊ぶ子供たちを眺めていられる落ち着いたスペースとなっています。
外部と一体化した外部的空間、蓼科のウッドデッキはそんな感じです。
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