僕のクライアントの大半は30代、40代の方々です。子供を育て、その歴史を建物に刻み、そして送り出す。そんな思いを抱きながら訪ねて来られます。ただまれに、子供はすでに独立し、夫婦2人だけの”終のすみか”を求めて来られる方もおられます。「老夫婦2人なら住宅を新築するよりマンションの1室を購入するか借りた方が、庭の草取りをしなくても済むし、防犯上も経済的にも有利ではないか。」そんな考え方もあります。ただ、それをふまえた上でも、自分の土地の自分の家に住みたい、そう思う方は意外と多い様です。
この家の奥さんは60代、ご主人はまだまだお若いですが、70を少しまわられています。未だに現役のドラマーであるご主人の唯一のご希望は、日なたぼっこが出来る場所がほしいというものでした。昔からある敷地奥の木々を残し、寝室と水廻り、そして、日なたぼっこができるリビングを細長い敷地の中にコンパクトにまとめました。
リビングと寝室の間に立つ太い大黒柱に、この家の新たな歴史が刻まれていくことを願っています。