名古屋市にも少し郊外に行くと、未だに山の自然が取り残されたような場所があります。この住宅もそんな場所に建っています。
土地探しから相談に乗ってきたクライアントが最後に決めた場所は5m程の小高い崖の上でした。道路側には古いRC造のガレージがあり、その横をかなり急な階段で登っていきます。東側は孟宗の高い竹林になっています。当初生活の利便性を考え、1階に生活の中心を配置する案を幾つか作りましたが、打ち合わせを重ね最終的に決まったのは、2階にリビングを作る案でした。利便性よりも名古屋の夜景を望める2階の眺望をクライアントは選ばれたのです。
古いガレージの上はウッドデッキとし、1階の広い玄関ホールにはそこに面した大きな開口を設け、一体感を作り出しています。更に玄関ホール上部は吹き抜けとし、2階のリビングとも空間的に繋がっていきます。ウッドデッキ~ホール~リビングという1階外部から2階への空間の流れを作り出しました。
条例により、建物は崖と反対の南側に寄せて建てる必要があったため、2階の南側には隣家の窓がすぐ迫っています。そのため、南の窓は細く横長にして、採光と通風のためだけに機能しています。そこにはめられた内障子からは、柔らかな光が室内に届けられます。東の大きな窓には太い木枠を付け、竹林の景色を額で切り取るようにしてあります。名古屋の夜景を望む北の窓も含め、作りの違うこれら三つの窓が2階の空間を決定ずけています。