そー騒音

イメージ画像1

人間の五感、その中で人が建築と接する時に一番重要なものは、もちろん視覚です。そして、次に重要なものは触覚を除けば聴覚でしょうか。「音」によって建築のすばらしさを感じることはしばしばあります。ルトロネ修道院内に荘厳に響いていた讃美歌は今も僕の心のひだを震わせます。そこまでの響きではなくとも、障子の閉まる音、畳を擦る音、床なり、会堂の響き等々、建築が発する音は時としてその味わいを深めてくれることがあります。ただ、これらの音を不快と感じた時、それは騒音と呼ばれることになります。

住宅等での騒音は階上からの足音、隣室からの壁越しの物音、窓からの近隣のピアノの音等々、その種類は様々です。それらへの対策としては防音床の採用、床構造の変更、遮音材や吸音材の充填、二重窓の追加、密閉性の確保等々、その対策も色々とありますが、高音と低音でもその伝わり方の特性は変わりますし、何を伝わってくるかによってもその対策は変わってきます。

以前FI邸というRC3階建て住宅の1階に音楽室を作ったことがありますが、そこでのマリンバの音が3階の平面的にも離れた部屋で聞こえたことがありました。かすかな音でしたが、2階の真上の部屋でも聞こえなかった音が一番離れた部屋で聞こえたのです。マリンバの打撃音が床からコンクリートの躯体に伝わり、そこまで届いたようでした。当初この音楽室は専門業者による浮き構造の内装を考えていました。浮き構造とはコンクリートの躯体の中に、振動が伝わりづらいもう一つの部屋を作るようなイメージです。ただ費用が高額なため、それは断念したのです。それでも、この音楽室は開口部のないコンクリートの躯体で囲まれ防音ドアや防音の換気扇を採用し、内装も浮き構造に近いものにしたのですが、わずかな打撃音だけは伝わってしまったのです。マリンバの下にカーペットを敷き打撃音を軽減し問題は解決しました。ただ、伝わった部屋はリビングでしたが、ここがもし寝室だったらもっと問題になっていたかもしれません。寝る時の小さな音はとても気になりますので...

騒音問題は客観的な音の大きさだけで決まるわけではなく、受け手がどれだけ気になるかという主観的な問題です。そのためその解決は費用も含めまさにケースバイケースでの対応が必要となるのです。階上の足音や隣室のピアノの音は時として騒音になりますが、それが可愛い子供や孫が発する音ならば家族の気配を感じる暖かな音にもなるのです。

TO