本物 (後編)

イメージ画像1

「ソリッド」なものが僕は好きなようです。表面だけでなく中身まで詰まっている、その感覚が好きなのでしょう。そして、その表面にまとわりつくいくつかの意味の衣を脱ぎ捨て、その物そのものが現れてくる感じが好きなのです。

「裸形の素材」 こんな言い方をするかはわかりませんが、そんな言い方がしっくりきます。昔「もの派」の作家が好きだったのもそのためでしょう。朽ちた鉄、版築の断面、コンクリートの切断面、長い年月を経て素材そのものに戻りかけている古道具等々。これらに魅力を感じてしまうのも、そのためでしょう。「裸形の素材」の持つその純粋性に惹かれるのです。もちろん、古道具等はそのプリミティブなデザインが大きな魅力の要因でもありますが....

「本物」であれ「偽物」であれ、素材は「建築」を構成する重要な要素のひとつです。建築家はその強度、防水性、耐熱性、耐久性等々、様々な性能を考慮して材料を決定していきます。ただ、そこに「好み」が存在するのも事実です。僕が「本物の素材」が好きなのは、経年変化が美しいという事もひとつの要因かもしれません。ずっと美しさを保つ素材はもちろんですが、長い年月とともに美しく朽ちていく、そんな姿にも魅力を感じてしまうのです。

TO