記憶

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雨に濡れる桜の木々を横目に見ながら、いつものように名古屋の現場へ行ってきました。 毎週金曜日が定例打合せ日です。30年以上前のRC造の住宅の改装で、内部は大半をリニューアルします。 写真は勾配の強かった古い階段の上に木を被せ勾配を緩くしているところです。左側に見える白い壁にはビァンコカララ(白大理石)が張られています。しかし、この後表面にプラスターボードを張り、塗装仕上げにします。お金を掛けて高価な「本物」の石を安価な「本物っぽい」塗装にするのです。何とか「ビァンコカララ」を生かそうかと考えましたが、クライアントの要望や様々な条件を考慮し、「本物」を捨てる事にしたのです。リノベーションをする時、建物の古い記憶や痕跡を積極的に残す事はよくやる事ですが、今回は出来る限りそれらを消し去る事にしたのです。どの方向にリノベーションするか、それはそれぞれの様々な条件によって決まってくるのです。 初めてこの建物を訪れた時、これを依頼したクライアントや設計した人の思いがそこかしこに感じられました。そして、それらが時とともに消えていく「哀れ」も感じずにはいられませんでした。消していくのは新しい住人であるクライアントと、他ならぬ僕自身なのですが… 工期は今月いっぱいです。新緑の頃に新しい住人がやってきます。そして、また新しい記憶をこの家に刻んでいくのです。 TO