部屋の外側にある廊下のような板張りの空間、それが「縁側」です。
「縁側」という言葉を聞く事は、僕の日常ではあまりなくなってきました。そして、「縁側」そのものを見ることも少なくなってきました。
自分で設計する住宅にこのスペースを作る事もありません。それは和室を作る事が少なくなってきたという事もありますが、何より、その価値をあまり感じていないからなのでしょう。
このスペースを作るくらいなら、その分部屋を広くする、もしくは工事費を削減する、そういう方向にいってしまうのです。厳密に言えば、「縁側」には雨が吹き込む濡れ縁(外縁)と雨戸やサッシなどで内部化できるくれ縁(内縁)とがあるのですが、ここで縁側、縁側と言っているのは実は「くれ縁」のことです。「縁側」と聞くと、僕はどうしてもこの「くれ縁」(内縁)をイメージしてしまうのです。
「縁側」と聞いて頭に浮かぶのは「日向ぼっこ」「小春日和」「猫」「将棋」「スイカ」「花火」等々...家族やご近所との間のほんわかとした暖かなイメージです。
古い民家や料亭、寺院、旅館など、その縁側に腰を下ろした時、何故かそんなイメージが頭に浮かんでくるのです。実は自分自身の中に縁側でのそんな実体験がある訳ではないー少なくとも記憶にはないーのですが、何故か心に浮かんでくるのです。それは心地よいその空間と、様々なメディアから後付けでインプットされた「縁側」のイメージが頭の中で混じりあい、そんな懐かしいような暖かな気持ちを起こさせるからなのでしょう。それはちょうど「サザエさん」の中に昭和の暖かな原風景を感じてしまうようなものなのかもしれません...
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