たー建物の寿命 (6) 再掲

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木造の構造的な限界年数も、もちろん、はっきりとした事を言う事はできません。1300年の法隆寺は別格としても、日本には多くの古い木造建築が今なお生き続けています。ただ、現代の木造建築がそれらと同様に長持ちするのかは、ちょっと疑問です。

木造の構造的な限界を決定付けるのも、やはり水分です。これによって木は腐り、その強度を落としていくのです。これを遠ざけ、理想的な乾燥状態を保てば、木は半永久的に生き続けるかもしれません。

適度な水分、温度、酸素があれば、木は腐朽菌に侵されてしまいますが、これらのうちひとつでも取り除いてやれば、木は腐りません。昔から木場などで木を水中で保管するのは酸素を絶つためです。水に浸ければ木は腐ってしまいそうですが、完全に水中に没していれば適度な酸素がないため腐朽菌が繁殖せず、木はいつまでもその美しい姿を保つ事ができるのです。しかし、実際の住宅では木を水にずっぽりと浸けておく事等不可能ですので、逆に水分を減らす事が木を長持ちさせるのに一番有効な方法となるのです。ここでいう水分とは雨水と湿度の事です。雨水を防ぐのは当然ですが、現代では防湿フィルム、透湿防水フィルム、通気層等で壁内の湿度を下げる事は常識となっています。それらによって木材を乾燥させ、長持ちさせようとしているのです。

ただ、古い木造建築にはそんなものはありませんでした。雨水を防ぐ深い軒、柱や梁などの骨組みをそのまま表に現す真壁工法、調湿性の高い土壁、これらがそれに代わり水分から木を守り、永い命を与えていたのです。そして、現存する多くの古い建物はその柱や梁等が現代のものよりもずっと太かった事も、それが生き永らえた大きな要因だったと思われます。構造的に余力があれば、多少部分的に腐ったとしても十分な強度が確保されていたのでしょう。

経済性のため柱を細くし、それを隠し、透湿層などの新しい工法で壁内の湿度を調整する現代の建物が、今後どれだけ生き延びる事ができるのかはわかりません。ただ、その中から第二の法隆寺が生まれる事はもうないのかもしれません。

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