鉄骨造の構造的な限界年数はどれくらいでしょうか。
これについても、やはり、はっきりとした事は言えません。鉄そのものは水分さへ防げば、半永久的に長持ちします。雨水の浸入を防ぎ、防錆処理が完璧であれば、ALC版などの壁そのものは別として、骨組みである鉄骨そのものはいくらでも長持ちするはずです。しかし、現実はそうでもありません。実際、財務省の減価償却資産の耐用年数表によると、住宅ではRC造47年、木造22年のところ、ある鉄骨造は19年となっています。ある鉄骨造とは、鉄骨の肉厚が3ミリ以下の建物の事です。ちなみに3~4ミリは27年、4ミリ以上は34年となっています。この数値は平均寿命などとは違い、建物の構造別の耐用年数をある方法で推定して出したもののようです。この数値が現実とかけ離れたものである事はすぐにわかりますが、肉厚3ミリ以下の鉄骨造が木造よりも長持ちしないと判断されている事は確かなのです。
以前、鉄骨造のリノベーションを手掛けた折、外壁下地の鉄骨の悲惨な状態を目の当たりにした事があります。使われていたCチャン(C型の軽量鉄骨。正式名リップ溝形鋼)が数箇所部分的に消失していたのです。つまり、錆びてボロボロになり、細かくなって下へ落ちていたのです。ほとんどの部分は無傷で、あっても表面的な錆程度でしたが、ごく一部がほんとうにひどい状態だったのです。もしちょっとした地震が起きていれば、外壁の一部が落下していたのは間違いないでしょう。原因はもちろん雨水の浸入と思われますが、内部結露も鉄骨にとっては大きな脅威となります。ここで使われていたCチャンは厚みが1.6ミリか2.3ミリのものだったと思いますが、薄い鉄骨は錆び始めるとすぐにこんな状態になる危険性があるのです。耐用年数表の19年という数字も、ある意味うなずける数字とも言えそうです。
ただ、最近は防錆処理の質も格段にアップしていますので、昔のような事はないでしょう。まして、重量鉄骨のような肉厚の厚いものを骨組みに使っていれば、なおさらです。とは言っても、鉄骨の最大の敵が水分であることは間違いありません。これによって鉄骨造の構造的限界年数は大きく減じられてしまうのです。
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