松福 かのう店

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岐阜駅のすぐ近く、交通量の多い幹線道路に面してこの店舗は建っています。あられの「松福」の店の設計はこれで4軒目です。

1軒目は30年近く前にこの敷地に建っていたRCと木造の混構造の建物です。売り場の木造部分とバックヤードのRC部分で構成されたその建物は、僕がまだ勤めていた時のものでしたが、僕にとって大切な作品のひとつでした。長い年月によって生まれた味わい深い建物を解体して消し去ることは大変忍びなかったのですが、手狭になった店舗は建て替える他ありませんでした。新しい店はギリギリまで床面積を確保したため、その形は羊羹のような直方体になりました。そのため、今までの店舗で踏襲してきたような「和」の衣は脱ぎ捨てざるを得ませんでした。そして、「松福」の歴史と品位を感じさせるための新たな衣が必要でした。それが外壁に使った銅板の菱葺きです。それは明治大正時代を彷彿とさせる新しい「和」の衣です。リシン搔き落し、タイルの市松模様張り、じゅらく壁、木組みの現し等々、今までの店舗の和の要素は残しつつも、そこに新たな衣を着させたのです。

外壁の銅板は時と共に変化を続け、何十年後かには全てが緑青に変わっているかもしれません。その姿を見ることはできないかもしれませんが、その頃にはこの建築がこの通りのシンボルになっていることを願っています。