吹抜け、そして垂直方向への空間の広がり、それらを考えた時、感動した幾つもの名建築や建築家が頭に浮かびます。ロマネスクの修道院、ゴシックやバロックの大聖堂、コルビュジエやバラガン、丹下、村野、篠原、安藤、谷口、、
ただ、違った意味で忘れられない、天井の高い建築がひとつあります。それはローマのサンピエトロ大聖堂です。クーボラ部の天井高136mのこの大空間に僕はあまり感動しなかったのです。このバチカンの大聖堂はルネッサンスからバロックの時代にかけて作られました。当時の大建築家達が携わったこの名建築の内部に入った時の感想は今も覚えています。「でかい!」燦々と太陽光が降り注ぐその大空間はただただ巨大でした。しかし、何故かその巨大さを実感として感じることがあまり出来ませんでした。その明るさもあったのでしょう、そこはまるで内部というより外部空間のようでした。その広さや高さに感動するのではなく、その巨大さを実感出来ないことが不思議だったという感想だけが残っています。大聖堂の中央部、ミケランジェロのクーボラの下にはバロックの大建築家ベルニーニのバルダッキー(天蓋)がまるで置き家具のように鎮座しています。初めてこの有名な天蓋を見た時、あまり大きくは感じませんでした。しかし、よくよく目測してみると 、「当時勤めていた3階建の事務所ビルよりずっと大きい。でかい!」その大きさが分かりました。「事務所ビルをこの大聖堂の中に建てたら小さな置き家具のようになるのか!僕のスケール感覚もいいかげんなものだ。」そう思ったものでした。実は今回新ためてバルダッキーの高さを調べたところ、高さは28.5mで、3階建の僕の自邸の3倍以上あることが判明しました。本当に驚きです。
僕がこれほどの大空間に驚きこそすれ感動しなかったのは、その内部空間の構成の仕方によるものもあったと思いますが、最大の原因はその明るさだったと思っています。内部空間を決定付けるのはその構成・形状だけではなく、そこに現象する光と影なのです。サンピエトロはあまりに明るく、影を感じることが出来なかったのです。そのためそこに心を動かされることがなかったのでしょう。前にも書きましたが、僕は同じローマでひとつの小さな聖堂を訪れています。バルダッキーを作ったベルニーニと同時代の巨匠フランチェスコ・ボッロミーニのサン・カルロ・アッレ・クワットロ・フォンターネ聖堂です。修道院に隣接したこの小さな聖堂は、目が慣れるまでは身動きが出来ぬほど薄暗い空間でした。ただ、真上を見上げた時、その先に見えるクーボラの光る天井はまさに天上のようでした。その小さな空間には天まで届く高さを感じたのです。今回改めてこの小さな聖堂の図面を確認してみると、正確には分かりませんが、クーボラの天井までの高さは多分17〜18m程度です。外部の最高高さは25m前後といったところでしょう。何と聖堂そのものがサンピエトロ内の置き家具のようなバルダッキーより小さかったのです。ただただ驚きでした、、、
TO

















