ジェロが死にました。
11月1日午後2時過ぎ、僕のひざの上でジェロは少しづつ死んでいきました。
一月程前からジェロは少しづつ衰弱してきました。行動範囲も狭くなり、たまにそそうもするようになったので、広めの柵を作ってその中に入れる事にしたのです。
トイレと食事の時以外は柵の中のホットカーペットの上でほとんどうずくまっていました。
ところが、死ぬ二日前頃から、か細い声でしきりに鳴くようになったのです。次の日柵から出しお気に入りの窓際に置いてやると、ふらつく足取りで僕の膝に乗ろうとするのです。
「そうか。こっちの方がいいか。」その日、僕はジェロを膝に乗せしばらく仕事をしました。
そして当日、その日はほとんど声にもならない声で鳴くジェロをひざに乗せ、再び机に向かって仕事を始めました。
すると、しばらくして突然、ジェロが僕の踵を思いっきり噛んだのです。
「いたい!」そう叫んで、すっかり軽くなってしまったジェロを持ち上げました。
そして再び膝に寝かせると、すでにジェロは息をしていませんでした。
「ジェロが死んだ。」隣で仕事をする妻にそうつぶやきました。
ところが、「えー」と言いながら妻がジェロをのぞき見ていると、しばらくして「プハー」と息を吹き返したのです。まるでコントのように...
でも、その「プハー」の間隔は少しずつ長くなってきました。僕はジェロを膝に乗せたまま椅子ごと日なたの窓辺に移動しました。
少し傾きかけた日差しを浴びて、やがてジェロは動かなくなってしまいました。
涙をぬぐい、うす汚れたジェロの体を風呂場で洗うと、そこにこうもりのような骨と皮の体が浮かび上がってきました。
「こんなになるまで頑張っていたんだね。」ドライヤーで毛を乾かしてくれた妻も泣いていました。
最後の瞬間までジェロは家猫でした。
そして、お気に入りの僕の膝の上から逝ってしまいました。
ジェロ、ほんとうに16年間、ありがとう。
でも、最後の一噛みはなんだったんだろう。今でも考えてしまいます。
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