塗り仕上げとは左官仕上げ、つまり、コテによって材料を塗る仕上げのことです。
塗装仕上げがハケやローラーや吹き付けガンによって塗料を薄く塗る仕上げなのに対し、左官仕上げはコテ等によって漆喰やじゅらくやモルタル等の素材を厚く塗っていく仕上げです。塗装仕上げの厚みが特殊なものを除けば数十ミクロンから数百ミクロンなのに対し、左官仕上げの厚みは数ミリから数センチと厚く、厚さ故のいくつかの利点があります。例えば調湿性等は薄い漆喰塗装よりも厚い左官の漆喰の方が優れていますし、表面の僅かな傷では下地が出てくることもありません。そして何よりその厚みにより下地のジョイントなどの不陸が隠れ、ぶ厚い存在感が生み出されます。問題点といえば手間と経済性、そしてクラックでしょうか。塗り仕上げはその材料が厚い分、材料の収縮等によるクラックが入りやすいのです。ただ、そのクラックもそれを味と思える人にはそんなに苦にならないかもしれませんが。
コテを使った左官仕事は大工仕事同様、職人さんの熟練度によって大きな差が生じやすいものです。僕も自邸の漆喰壁を何度か自分で補修したことがありますが、周りの仕上がり具合との差は歴然です。( 写真は僕が補修した所です。)コテで壁を平滑に押えることは素人では至難の業なのです。僕が設計した多くの建物では漆喰を使うことがありますが、中には材料の砂を変えそれを浮き上がらせるような仕上げにすることがあります。ただそれも施工する職人さんとの直接のやり取りがないとなかなか決めることはできません。このように僕らの仕事は優れた職人さんたちによって支えられていますので、最近の現場で若い職人さん達をあまり見かけなくなってきたことは、とても気になるところです。
クロスでは出せない本物感、塗り仕上げはいつまでも残したい大事な仕上げのひとつです。
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