松福一宮店

2015年

松福は岐阜市内に本店を持つあられの老舗です。僕が独立前に岐阜の加納店を担当した縁で、今回設計する事になりました。

打合せでクライアントが望まれたのは、以前と同様、暖かく飽きのこない長持ちする店舗でした。打ち合わせの結果、デザインは在来店を踏襲し、より本格的な木造建築とする事になりました。屋根はいぶし瓦、外壁はリシンかき落し、内壁はじゅらく塗り、床は加納店で僕が考案したせっ器質タイルの市松模様張り。他の要素も出来るだけ「本物」を使う様にしました。

建物は開放的な大屋根の店舗部分と、閉鎖的な蔵風の倉庫部分から成り立っています。この二つの棟とその中間の中庭が、周囲を囲う植栽とともに複雑で豊かな表情を作り出しています。庭は庭アトリエの金子さんにお願いしました。

僕は以前から客として松福にあられを買いに行きます。会計の間、畳座に座り振舞われた一服のお茶を頂きます。ゆったりとした一連の流れは従業員の方の礼儀正しさとともに、僕に僅かな憩いの時を与えてくれます。クライアントである現社長は周囲の人に細やかな気遣いをされる方で、そんな社長の精神が従業員にもしみ込んでいるのでしょう。

今回僕が作ったのは一宮店という器です。そこに社長が望む雰囲気を与えてくれるのは、そこで働く従業員の人達です。きっと、永く続く暖かな雰囲気を盛り付けていってくれる事でしょう。