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本物 (後編)2015.02.27

「ソリッド」なものが僕は好きなようです。表面だけでなく中身まで詰まっている、その感覚が好きなのでしょう。そして、その表面にまとわりつくいくつかの意味の衣を脱ぎ捨て、その物そのものが現れてくる感じが好きなのです。

「裸形の素材」 こんな言い方をするかはわかりませんが、そんな言い方がしっくりきます。昔「もの派」の作家が好きだったのもそのためでしょう。朽ちた鉄、版築の断面、コンクリートの切断面、長い年月を経て素材そのものに戻りかけている古道具等々。これらに魅力を感じてしまうのも、そのためでしょう。「裸形の素材」の持つその純粋性に惹かれるのです。もちろん、古道具等はそのプリミティブなデザインが大きな魅力の要因でもありますが....

「本物」であれ「偽物」であれ、素材は「建築」を構成する重要な要素のひとつです。建築家はその強度、防水性、耐熱性、耐久性等々、様々な性能を考慮して材料を決定していきます。ただ、そこに「好み」が存在するのも事実です。僕が「本物の素材」が好きなのは、経年変化が美しいという事もひとつの要因かもしれません。ずっと美しさを保つ素材はもちろんですが、長い年月とともに美しく朽ちていく、そんな姿にも魅力を感じてしまうのです。

TO

 

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本物 (前編)2015.02.24

本物の素材。僕はたまにそんな事を言います。

何が「本物」の素材なのか。別に公に決まってもいませんし、僕自身もきちっと定義している訳でもありません。ただたまにそう言ってしまいます。

無垢の木や金属、石、漆喰、ガラス、コンクリート等々。それらが僕にとっては「本物」の素材です。「本物」があるなら「偽物」もあるはずですが、そんなふうには言っていません。でも、それらを模したプリント合板やリノリウム、クロス、樹脂系の素材等は僕にとっては「偽物」です。金属の厚い無垢板はもちろん本物ですが、木目調のトタンは「偽物」、薄いガルバリウム鋼板はその中間といったところでしょうか。

自分自身が何をもって「本物」と言っているのか。オリジナルが「本物」で、それを模したものが「偽物」。もちろんそれが大きな要因でしょう。でも決してそれだけではない気がします。レンガ積みを模したレンガタイル張り、じゅらくの土壁を模した今のじゅらく塗り、石を模したテラゾーブロックや漆喰の磨き仕上げも「本物」という気がします。コーリアン等の人造大理石も大理石風のメラミンに比べれば「本物」に近い気がします。表面の仕上げが厚い素材が、僕に「本物」という感覚を与えるようです.....

写真は5ミリの鉄板の切れ端です。すこし黒皮になりかけた表面に、ウレタン塗装がしてあります。

TO

4歳
息子の誕生日2015.02.20

昨日は息子の4歳の誕生日でした。

午後、いつもより早めに帰ってきた息子とおじいちゃん、おばあちゃん、皆で「お誕生日」を祝いました。去年の誕生日は誰よりも早くケーキを平らげた息子が、今年はケーキそっちのけで、プレゼントに夢中になって遊んでいます。「成長したのか?それとも、去年と違ったケーキがおいしくなかったのか?」そんな事を思いつつ、車でひとり関へ向かいました。夕方から仕事の打合せが入っていたのです。以前住宅を設計したクライアントが運営する老人施設の改装の仕事で、スタッフも交えたミーティングです。

経営者、職員、双方からの様々な意見をお聞きし、議論を深めていきましたが、その日は時間切れとなってしまいました。次回の打合せ日を決めて、ミーティングは終了です。車椅子や歩行器の中を利用者の老人の方々を思い浮かべながら、玄関ホールへと向かいました。そして、玄関から外へ出た時です。「こんばんは。」と大きな声が聞こえました。どきっとして、僕も思わず、「こんばんは。」と大きな声で返しました。見ると、小学校中学年ぐらいの男の子がこちらへ歩いてきます。「ごくろうさま。」とすれ違いざまに言って、玄関の中へ入っていきました。「職員の方の息子さんかな?」などと思いつつ、ここの施設のスタッフがいつも大きな声でこちらに挨拶するのを思い出しました。

「うちの息子もあんな風に素直に育ってくれるかな。」そんな事を思いながら、帰路につきました。

幅広い年齢層の人の事を思う、そんな一日でした。

TO

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土地探し  8     崖 (後編)2015.02.15

敷地全体が崖、こんな土地でも住宅は建築可能です。ただ、この場合は膨大なコストが掛かる事もあります。以前、斜度40度程の崖地での住宅建築の試算をした事がありますが、1000万円近いコストアップになりました。もちろん崖の高さや勾配、隣地や周辺道路との関係等によって、その金額は大きく変わってきますが、このような土地は特に注意が必要です。購入前には必ず専門家のアドバイスを受けた方がよいでしょう。

崖のような特殊な土地は崖崩れ等のリスクやコストアップ等のデメリットがあります。ただ、そこにそれらを超えるものを見出すことができれば、買う価値も生まれてくるでしょう。

写真はFO邸です。

TO

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土地探し  7     崖 (前編)2015.02.11

高台の見晴らしの良い土地は大変魅力的です。

ただ、崖に近い土地は崖条例により、建設可能な土地の範囲が規制される事があります。一般に崖条例と呼ばれているのは、各自治体が独自に定める建築条例の中にある、崖付近の建築物への規制です。自治体によってその内容は微妙に違いますが、崖上の建物では、崖からのセットバックの値等が定められています。2M以内の低い崖や、法律上問題のない擁壁や岩盤等の緩和項目等も決められています。

愛知県で建てたYU邸では、崖下から崖の高さの2倍のセットバックが必要でしたので、ほぼ5Mの崖に対し10,5Mのセットバックをしました。岐阜のFO邸では、崖の中心線から崖高さのほぼ10Mをセットバックしています。ただ、いずれの場合も建物を建設した部分は平らな土地でしたので、建設コストがさほど高くなる事はありませんでした。そして、建築出来ない崖に近い部分は庭やウッドデッキ等で有効利用しましたので、土地も無駄にはなっていません。このように崖からセットバックしても、建築可能な平らな部分がある敷地であれば、他に問題がなければ、大変魅力的な敷地といえるでしょう。もちろん、住宅のプランニングによって、その土地の特性が十分生かせるかどうかは大きく変わると思いますが.....

写真はYU邸です。

TO

 

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土地探し  6     お隣 (後編)2015.02.07

そして、既に隣家が建っていれば、その形や窓等の位置を考慮して、計画をする事ができます。僕は常に周囲の隣家やその窓の位置を実測し、それから計画を始めます。KM邸では設計依頼の時、東西に細長い敷地のすぐ南は更地でした。幸い、そこに住宅の建設が決まったので、その建物の計画が決まるのを待ち、それを教えてもらってからこちらの設計を行いました。でももし、それが決まっていなければ、将来建つであろう建物を推測して設計する事になったのです。

未だ建っていない隣家は大きな不確定要素であり、リスクでもあります。ただ、既に建っていれば、より良い対処方法を見つける事も出来、それをプラスの要素に変える事も可能なのです。

写真はKM邸の東側正面です。すぐ南側にお隣が建っています。

TO

⑤地中美術館
土地探し  5     お隣 (前編)2015.02.05

お隣が建っていないので、明るく広々として見渡しが良い。

でも、そんな土地は家が建つと、すぐその良さは消えてしまいます。

市街地に土地を探すのであれば、隣が更地というのは避けた方がよいかもしれません。もちろん、何らかの理由で将来的に何も建たないというのなら話は別ですが、そうでなければ、むしろ家が建っている方がお勧めです。

何といっても防犯に有利ですし、境界に隣の塀がある場合は、こちらで作る必要がないかもしれません。外構工事もやり方によって、結構費用が掛かりますので、その分ローコストに抑える事も可能です。

そして、隣家があれば、隣人がわかります。何かちょっと一声掛ければ、ある程度その人柄もわかるでしょう。更地ではどんな人が隣人になるか、まったくわからないのです。隣人とはずっと付き合っていく事になるのですから、結構重要な問題です。

また、隣家によって外から見えなければ、その部分の外観を気にする必要もありません。外壁の素材をローコストなものにする事もできますし、外から見える窓の大きさや位置を気にする必要もありません。瀬戸内の直島に安藤忠雄の地中美術館という有名な建物がありますが、その内部空間は秀逸です。数ある安藤作品の中でも僕が特に好きな作品です。これは地下建築のため外観を考えず、光の入れ方や空間構成等、全て内部のみを考えて、理想的な空間を創る事が出来たからではないかと思っています。隣家に隠れる窓の話に大建築家の美術館を引き合いに出すのは、大変恐れ多い事ですが...

TO

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節分2015.02.03

  本日は節分ですね。子どもが幼稚園で作った鬼のお面と折り紙で折った豆の袋を嬉々として持って帰ってきました。

赤ちゃんの時は、父が手作りした鬼のお面を怖がってギャン泣きしていた我が子。今年はなんと自ら鬼役を買って出てくれました。寒くて暗ーい部屋の外から小鬼が『がおー!がおー!』と迫ってきます。部屋の中から『鬼は外ー!』と豆を投げつける父母・・・なんだかアベコベな気がしますが、本人が喜んでいるなら、まぁいいですよね。

 先日も年少児達がダルマさん転んだで遊んだ時、ほとんどの子ども達が鬼をやりたがるという事がありました。成長過程の一つなのでしょうか。親の思いと違うと面食らう事もありますが、良い意味で裏切ってもらいたいです。

YO

夕陽
土地探し  4     借景 (後編)2015.02.01

望むべき借景がなければ中庭を造り、空を借景として切り取る事も可能です。どんな土地でもすばらしい家を創る事は出来るでしょう。ただ、川、山林、公園、遠い街並みの眺望等々、将来的に変わらないすばらしい借景が望める土地は、その方向が南であれ北であれ、最初から得難い宝を備えていると言っていいでしょう。その方向に建物を開く事により、そこからの光や風、眺望を得る事ができるのです。そして、借景には草むしりの手間も固定資産税も要りません。維持費は掛からないのです。もちろん、そこに手を加える権利もありませんが…

すばらしい借景を持った土地はなかなかありません。得難い宝はなかなか得難いのです。ただ、これから土地を探すのであれば、「借景」の事も頭の片隅に入れておいたらいかがでしょうか。

写真は僕の自邸の3階から見た夕焼けです。遠くに見える山は伊吹山です。屋上へ登ると長良川も見えます。

TO

一級建築士事務所 内川建築設計室 岐阜・愛知・三重を中心に夫婦で建築設計事務所を営んでいます。