設計と施工 (3)2015.03.31

4 建設会社に頼む

この方法は一般に言うところの建設会社による設計施工です。これは5つの方法の中で比較してしまうと、メリット、デメリットを挙げずらいですので、設計事務所へ依頼する場合とだけ比較してみます。

この設計施工の最大のメリットは、何といっても工事費の早い段階での確定でしょう。最初に予算を伝え、それに合った図面と工事を依頼すれば、原則的には追加工事は発生しません。

ただ実際は、工事が進行する過程で発生するクライアントの変更要求等で、かなりの追加工事が発生する事があるようです。そして、公共機関や大会社が大手ゼネコンに依頼するデザインビルドとは決定的に違う事があります。そのひとつは、個人の方には施工やコストに関してのチェックがほとんど出来ないという事です。そしてもうひとつは、例外もあるとは思いますが、小さな建設会社には独立性の高い優秀な設計者がほとんどいないという事です。

ほとんどの施工会社は基本的には良心的で、悪質な手抜き工事などはしないと僕は思っています。ただ、自社に都合の良い施工方法を選択する事はあるでしょうし、、ミスを自社内でチェックするシステムが大手ゼネコンのように機能していないと思われるのです。実際配筋検査などに行くと、何故間違うのかというような重要なミスを発見する事が多々あります。決して故意ではないのですが、そのようなミスは意外と多く発生しているのです。そして、それらをチェックする機能があまり働いていないように思えるのです。

また、コストに関しても、暴利をむさぼるような悪質な業者は少ないとは思いますが、競争原理が働かない中で、ギリギリの価格をわざわざ出してくるところも少ないでしょう。

そして、何よりそこに優秀な設計者がいなければ、質の高い建築を望む事は出来ません。空間の質を高めるため、光の入り方や空間構成、そして様々なディテールを何度も何度もスタディし、使い勝手を少しでも良くするために、小さな部分まで何日も掛けて検討する。このような地道な作業がない限り、質の高い建築は出来ないのです。これは建築好きな設計者なら決して苦ではありません。むしろ楽しいのです。ただ、納得いくまで時間を掛け、自分がなし得る最高の質まで建築を高める事が、一般的な建設会社の一設計者に可能かどうかは、はなはだ疑問です。

ただ最近、小さな建設会社の設計施工物件でも、なかなかデザイン性の高いものを見かける事があります。どうやら、下請けとして優秀な設計者が関わっているようなのですが、この場合は質の高い建築も可能になってくるかもしれません。ただ、下請けとしての設計者のクライアントはあくまで建設会社であり、その家を買われる個人ではありません。そのため、どこまで中立性の高い施工チェックやコストチェックが可能なのか、その点についてははなはだ疑問です。

僕は来られるお客さんには 「大工さんに直接頼むのならともかく、設計施工で工務店に依頼するぐらいなら、僕のところでなくても、優秀な設計事務所に依頼した方が良いと思います。10%程度の設計料は工事入札に掛ければ、出てくる見積もり金額の差額で吸収できるかもしれません。たとえ一社に特命にしたとしても、見積もりチェックや設計の工夫などで十分元は取り返せますよ。」 と伝えています。

もちろん、優秀な設計者が下請けにいて、その人が思い通りに力を発揮し、良心的で施工技術が高い、そんな建設会社もあるでしょう。そして、そんな業者がごく近い身内にいれば、お値打ちなコストで仕事をしてくれるでしょう。その時は、優秀な設計事務所もちょっと歯が立たないかもしれません.....

TO

 

 

   

 

 

設計と施工 (2) 2015.03.29

個人の方が住宅を手に入れようとすると、自分で作るのでなければ、大雑把に言って下のような5つの方法が考えられます。

1 既に出来た建売住宅を買う

2 ハウスメーカーに頼む

3 個人の大工さんに頼む

4 建設会社に頼む

5 設計事務所に頼む

これら5つの方法には、手に入れようとする個人の方にとって、それぞれにメリットとデメリットがあります。様々な意見もあるでしょうが、僕が思うところを簡単にお話してみたいと思います。

1 既に出来た建売住宅を買う

この方法の最大のメリットは、何といっても、一般の商品のように出来たものを確認してから購入できる事でしょう。しかし、これはデメリットにもなります。つまり、出来上がる工程 (見えない部分) が確認できないのです。

僕は独立前にいた事務所で、建売業者の仕事をした事があります。担当した物件はごく僅かでしたが、大工さんは誠実な人でした。ただ、建売業者から請け負う単価は驚くほど低く、とてもまともな監理は難しいと思った記憶があります。他の現場では無筋コンクリートの基礎も平気で作られている、と聞いた事もあります。今はそんな劣悪な物件は少なくなっているとは思います。ただ、もし建売住宅を買うのであれば、当然ですが、信頼できる業者を選択する事が非常に重要になってきます。

どうすれば信頼できる業者を見極められるのか。それはなかなか難しいところです。もしその業者や下請け業者の業界内での評判などを調べる事ができれば、ある程度はわかるかもしれません。そして、その業者が昔作った物件の状態を確認したり、工事中の他の物件を見ていても、ある程度の判断材料にはなるでしょう。しかし、それは一般の方にはなかなか大変な事かもしれません。それでも、少しでも多くの情報を集める事が大変重要と言えるでしょう。

2 ハウスメーカー に頼む

この方法のメリットは 1 と同様、住宅展示場等でかなり近いものを事前に確認できるという事でしょう。そして、名の通ったメーカーであれば施工の信頼性も高いでしょう。また、ある程度は間取りや仕上げの変更も可能です。

ハウスメーカーは一般的にプレファブという大量生産によって、良質なものを安価に供給する努力をしています。普通の住宅が手工業的方法で作られる中、それは大変意味のある事だと思います。ただ現実は、クライアントの様々なオーダーによる差別化によるコストアップや、CM等の膨大な経費によって、決してローコストなものとはなっていません。

実際僕の事務所では、ハウスメーカーでは予算が合わなかったというお客さんのものが数多くあります。もちろん、デザインや間取りが気に入らなかったという方もおられますが、要望を叶えようとすると、どうしても予算オーバーになったという方が以外に多いのです。ハウスメーカー、特に一流のものは意外と高いのです。

3 個人の大工さんに頼む

この方法の最大のメリットは、なんといっても価格でしょう。他の方法では、純粋な建設費以外の費用が絶対に掛かります。会社が大きければ大きいほど掛かる様々な経費、CM等の広告料、設計監理料等々。これらが個人の大工さんに頼めば全て掛からないのです。厳密に言えば、下請けの設計士などへの経費が掛かっているのですが、それでも他の方法より安い事は一目瞭然です。僕はよく、かなりなローコストを望まれるお客さんには、「デザインや、ある程度の使い勝手を諦めれば、近所で評判のいい大工さんに直接頼むのが一番お安いですよ。」とお話しています。

もし、デザイン力と技術力のある良心的な大工さんがいたら、設計事務所ではとうてい歯が立たないでしょう.....

TO

設計と施工 (1)2015.03.26

「デザインビルド」 最近よくこの言葉を目にします。

設計(デザイン)と施工を一括して工事を依頼する方法です。東京オリンピックで作られる多くの施設も、この方法が採用されると聞きました。

この方法のメリットは、受注する会社の得意な技術やノウハウが反映され易い事、工期の短縮、工事費の早い段階での確定、工事責任の明確化、発注業務の簡易化等が挙げられています。ただ、設計事務所側からはこの方法に対する批判の声も上がっています。アメリカでよく見られる、設計事務所と施工会社がチームを組みデザイン・施工両面を一括受注するデザインビルド(DB)とは違い、一社に設計施工を依頼すれば、偏った設計やその質の低下を招き、コストや品質に関しての中立性の高いチェック機能が働かないのではないかという批判です。

従来、設計事務所の存在意義は、その設計能力と独立性の高い工事監理能力のふたつによって成り立っています。1業者による設計施工はその意義そのものを否定する事にもなるのです。ただ、施工に関してのノウハウは、大手の設計事務所でも大手ゼネコンには太刀打ち出来ません。ましてや、そこに優秀な設計集団を抱えたスーパーゼネコンなら、その優位性は明らかでしょう。客観的な施工チェックやコストチェックを発注者が出来るシステムがあれば、DB は優れた方法と言わざるを得ません。今後設計事務所はDBの設計パートナーや下請けとなったり、発注者側の設計・施工・コストチェックの代理人となったりと、今までとは少し違った仕事をするところも増えてくるかもしれません。

奇抜なデザインによる予算オーバーや雨漏りの心配が減り、工期の遅れを気にせず、一本の電話で簡単に事が運んでいき、そこそこのコストでそこそこのデザインで出来上がるデザインビルドは、ある人達にとっては夢のような方法かもしれません。ただ、そこに目を瞠るような優れた建築が出来てくるのか、それについては今後注意深く見守っていく必要があるでしょう。

ところで、今までお話したのは竹中工務店等、優秀な設計集団を抱えた大手ゼネコンによる巨大な工事のデザインビルドの事です。僕が携わっているような一般的な個人住宅では、ちょっと話が違ってきます.....

TO

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木は重い2015.03.24

木は以外に重いのです。

以前、改装工事をした時、ホワイトアッシュの無垢板のガラス戸を使った事があります。四方に12センチ巾のホワイトアッシュの無垢の框が回り、中は5ミリの板ガラスで、高さ2.2M巾1.2Mの少し大きめの建具です。それを調整するのに、建具屋さんが大変苦労されていました。「ガラスは重いですからねエ。」と僕が声を掛けると、建具屋さんは即座にこう言ったのです。「この建具はガラスより木の部分の方が重いんじゃないですか。」

 建具屋さんにそう言われて、まさかそんな事はないだろうと思って、重量を計算してみました。すると、ガラスが23kg、木が19kgで、やはりガラスの方が重かったのですが、木も意外に重く驚きました。建具を考える時、ガラスは重いという感覚は持っていましたが、木材の重量はあまり意識した事がなかったからです。室内では、木製建具はフラッシュ戸という内部が中空の構造のものを使う事が多く、それは木材の量も少なく、軽量です。そのため、大きなガラスを使うと、それによって重くなる、そんな感覚をずっと持っていたのです。

また、使用したホワイトアッシュという材料は比重が0.69で、松や檜の1.5倍程の重さがあったため、なおさら木部の重量が増えたのです。

「木は以外に重い。」 そう感じました。

ちなみに、桐などの軽い材料は比重0.3、水に沈む木として有名なリグナムバイタは1.3もあります。

TO

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お絵かき2015.03.22

もうすぐ春休み。先日、幼稚園で書き溜めた1年分のお絵かき集を息子が持って帰ってきました。

4月から時系列で綴ってあり、成長過程がよくわかります。人物画が多いのですが、顔だけだったものが顔から直接手が生え、足が生え、ここ最近になって胴体が描かれるようになり、頭足人から人間に進化していました。

大人には描けない子どもならではの絵を1日に何回もニヤニヤしながらついつい見てしまいます。

YO

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漆喰の厚み (後編)2015.03.19

最近、いくつかの木造住宅でドイツのプラネットウオールという漆喰を使ってみました。これはプラスターボードにコバウ下地という紙を全面に張り、その上に1~2ミリの漆喰を塗るというものです。

木造はRC造に比べ揺れ等が大きく、表面にクラックが入りやすいので、これを採用してみたのです。それなりの地震が来た時にどうなるかはちょっとわかりませんが、今のところクラックはほとんど入っていません。そして、下地のジョイントも気になりません。なかなかの優れものですので、今後も使う機会はあるでしょう。

ただ、塗り厚が1~2ミリである事がちょっと気になります。この事が長い年月とともに、少しずつ感じられてくるように思います。傷をつけた時や地震などでクラックが入った時に、そこに見られる材料の厚み。どんと手をついた時の感触等々。これらがその材料の厚みや重みを僅かに伝えてくる気がします。薄いボードに塗られた薄い仕上げは、やはり厚みのある仕上げとは重量感が違います。

ただ、材料の重量感をとるか、表面のクラックの入りづらさをとるか、どちらをとるかはなかなか難しい問題です。クラックは往往にしてクレームの大きな要因となるからです。室内から見えるクラックは、構造的にはまったく問題がない場合がほとんどです。もちろん例外もありますが、仕上げ部分の表面的なもので、構造とは直接関係がないものが多いのです。それでも見た目は悪いですので、大きなクレーム要因となるのです。そのため、ハウスメーカーなどではあまり使われません。

今後も漆喰を塗る時は、その表面の色やテクスチャーのみならず、下地も迷う事でしょう。重量感、クラック、経年変化、経済性、クライアントの意向等々、様々な要素を考えながら決めていく事になると思います。

でも.....漆喰は厚い方が好きです。

TO

 

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漆喰の厚み (前編)2015.03.17

僕の家の壁と天井はほとんど漆喰塗りです。そのため、猫臭さをかなり軽減してくれているようです。最近ほとんど使われなくなった材料ですが、僕は昔からよくこの素材を使います。

漆喰は猫臭さを軽減するだけでなく、調湿性があるため結露しづらく、カビがあまり生えません。そして、塗装のように変色する事もありません。ただ、柔らかいため傷がつきやすく、表面的な汚れはサンドペーパーで簡単に落ちますが、染み込んだ汚れは落とすことが出来ません。それでも、僅かにスサの浮き出たその質感は大変美しいものです。

普通の漆喰は中に寒水という白い砂を入れ、金鏝で押さえます。ただ、その砂の種類や大きさを変えたり、鏝の種類や押さえ方を調整したりして、表面に砂が浮き出るようにする等、様々にテクスチャーを変えることも可能です。また、色粉を入れて色付けをする事もあります。ただ、ほとんどの場合は、僕の自邸のように一般的な仕様にしています。

僕のところに塗ってある漆喰の厚みは、下塗りも含めるとおよそ10ミリ前後といったところでしょうか。上塗りだけを1、2ミリ塗る工法もありますが、やはり厚みのある方が僕は好きです。プラスターボードにジョイント処理後、直に上塗りをすると、光の当たり方で下のボードの感じがわかり、厚みを感じられません。ただ、厚く塗れば塗るほどヒビが入りやすくなってきます。僕の家の壁はクラックまみれです。これはローコストに抑えるため、コンクリートに打ち込んだ木毛版に直に左官仕上げをしたためですが、僕は気になりません。クラックが入っていても、入り方が素材の厚みを感じさせてくれるからです。

もちろん、クライアントの住宅はもっとちゃんとした仕様ですので、こんなにクラックが入る事はありませんが.....

TO

 

 

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梅林公園2015.03.15

梅林公園に子供を連れて行ってきました。

着くと、いつも最初は公園にある「D51」に乗ります。この日は「梅祭り」。いつもと違い、「D51」には運転士さんもいて、煙突からは煙まで出ています。帽子を借りて記念撮影をし、その後芝生に座り、二胡と太鼓の演奏を聴きました。太鼓好きの息子は真剣に聴き入っています。息子がせがんだ焼そばを食べ、土産に水ヨーヨーと爆弾菓子を買いました。

公園は色とりどりの梅の花が咲き、風もなく暖か。一足早い春の匂いを満喫した、穏やかな日曜日でした。

TO

 

 

 

桜の季節2015.03.13

「ソメイヨシノは上野公園で人為的に作られた一本の原木から全国に広まったと推定される。」  

そんな記事が今日の新聞に出ていました。つい3、4日前は大雪だったのに、もう桜の季節。早いものです.....

昨日、「松福一宮店」をアップしました。去年出来たものですが、いつものように作品アップはぐずぐずと遅くなってしまい、すぐ桜の季節。早いものです.....

よろしかったら、一度ご覧ください。

TO

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妖しい黄金色 (4)2015.03.10

「金」は何故、妖しい虚構性を生み出すのでしょうか。

それはたぶん黄色く光るその輝きのせいでしょう。現実の3次元の物質の世界に使われた時、「金」は表面にその輝きによって通常の影を作りません。現実の襞を作らないのです。3次元に現れた2次元平面、しかしそれは異次元へといざなう平面でもあります。それが虚構性を生み出すのでしょう。それは銀色に輝くシルバーも同じです。それもまた虚構性を生み出します。しかし、シルバーには「金」のような色味がありません。色気がないのです。それが黄色く光る黄金色の「妖しさ」を創らないのです。「銀」が清浄なミニマムな輝きなら、「金」は妖しい重層的な輝きと言えるかもしれません。赤でもなく青でもなく黄色に輝くその光が、人肌のような妖しさを生み出すのかもしれません。

現実の「金」は重く、その希少価値により血塗られた歴史を作ってきました。人間の血と欲望を吸い込んで妖しく輝く。そう言うとちょっと大袈裟ですが、ロマノフ王朝の末路に思いを馳せる時、黄金色に輝く「おとぎの国」も、その輝きゆえに一層哀れに見えてきてしまうのです。

TO

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妖しい黄金色 (3)2015.03.07

「金色」は現実とかけ離れた虚構性の象徴かもしれません。リアルな描写の中に「金色」を使う事で、現実と虚構の間にギャップが生まれ、そこに「間」のようなものを感じるのかもしれません。

白色の中、過剰なまでに金色を施した「ロマノフ」の空間は「金色」ゆえの虚構性を帯び、「おとぎの国」を作り出したのでしょう。それは、金閣寺や金の茶室にも通じるところがあるかもしれません。

日本には現実の世界で朽ちていくものに対する「侘び さび」という美意識がありますが、それとは違う「雅」という美意識もあります。現実的な穢れを剥ぎ取った上品で優雅な貴族的な美意識です。普通は金以外にも檜の白木や緋毛氈などが好まれる素材ですが、それを金一色にするところに、金閣寺や金の茶室には「雅」に届かない無粋さと、ある狂気のようなものを感じてしまいます。

「ロマノフ」もそれと同じような美意識で、そこに「おとぎの国」という虚構性を作ってしまったのでしょう。リアルさを完全に排除してしまえば、虚構との間に「間」は生じないのです。「妖しい」魅力は感じられないのです。逆に「ベルサイユ」では、彫りの深い陰影が強固なリアリティを作り出し、虚構性が薄まり、そこに「間」が生じていないのかもしれません.....

TO

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妖しい黄金色 (2)2015.03.04

「ベルサイユは光と影という感じ。ロマノフはおとぎの国。」そう言った妻の言葉に、なるほどそのとおりと感じました。ただ、「現物を見ると、ロマノフは薄っぺらく感じるんじゃないか。」僕はそう言いました。しかしそれは、ほとんど同じ事を言っていたのですが...

僕は「金色」は決して嫌いではありません。昔わざわざ画集まで買ったクリムトや、琳派の画、黒漆の中の金蒔絵等々。金色には底光りする妖しい魅力を感じてしまいます。銀色にはない妖しさです。

金蒔絵や金屏風の美しさは日本家屋の暗がりにあってこそ引き立つと、「陰影礼賛」の中には書かれています。暗がりの蝋燭の光に妖しく底光りする「金色」こそが、その色の最高の瞬間だと言っているようです。現代にその暗闇はありません。ただ、暗闇の中でなくともクリムトや蒔絵の「金色」に、僕は「妖しさ」を感じてしまいます。そこに何か魅力を感じてしまうのです。

しかし、本物は見ていませんが、陽光の中に光り輝く「ロマノフ」も、光と影を感じる「ベルサイユ」にも、同じような「妖しさ」は感じられません。おそらく、「金」の使われ方に「間」のようなものが感じられないからでしょう。ベルサイユには、埋め尽くされた物質の中に、バロック独特の「影」を感じる事はできますが、「間」は感じられないのです。

「間」は建築、絵画に限らず、日本の芸術全般に渡り、それと西洋とを対比するのに大変重要な概念です。何でも「間」に結び付けてしまうのは安直な気もしますが、あながち間違いでない気もします。

クリムトの金色に輝く装飾のような絵画が、性的なエロティシズムを表現しようとしていたにせよ、そこから発する「妖しさ」はその事だけでは説明できません。日本の工芸や絵画に影響された「金」の使われ方にも、大きく関係していると思われるのです.....

TO

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妖しい黄金色 (1)2015.03.01

金はもちろん、金色を建築に使う事はほとんどありません。真鍮の金物や目地棒をデザインの重要な要素として取り入れた事は過去にありますが、今はほとんどなくなりました。

昨日、NHKのロマノフ王朝秘宝伝説という番組で、黄金色に輝く大空間が映し出されていました。金箔を全面に施されたその大広間は、金色と白色に輝く煌びやかな光の空間でした。「きれい。ベルサイユ宮殿よりずっときれいじゃない?」妻が僕に聞きました。「こんな建築を男性はどう思うのか、美しいと思うのか?」アルコールが入っていたせいもあるでしょうが、少し雑な質問に、すぐには答えられませんでした。「このロマノフの宮殿に対する一般的な男と女の美意識の違い」なのか。「ベルサイユとロマノフの違い」なのか。はたまた「一般的な装飾過多な建築について」なのか。「黄金色に輝くこのロマノフの宮殿について」なのか。様々な側面から論じる事があり、すぐには口を開けなかったのです。

一般的に装飾過多な建築は男より女性の方が好きな人が多いでしょうし、黄金色に輝く建築(装飾品)もそうでしょう。僕もヨーロッパへ建築を見にいった時は、パリへは行ってもベルサイユへは足も運んでいません。他に見たい物がたくさんあったのです。ただ、他の多くのバロック建築にも感動しましたし、ゴシックやアールヌーボー、ガウディの建築にも大きく心を動かされました。装飾豊かな建築も好きなものは好きなのです。ただ、一言に装飾といっても、その種類や範囲は膨大です。語り出せば際限がありません。

「金」についてだけ、思いを綴ってみます.....

TO

一級建築士事務所 内川建築設計室 岐阜・愛知・三重を中心に夫婦で建築設計事務所を営んでいます。