素朴なコンクリート (6)2015.04.28

デザインの側面において、コンクリートが成し得たもうひとつの功績は、仕上げ材としての「打ち放しコンクリート」という新しい素材を作った事でしょう。

コンクリートは土と石から出来ていますが、その表情は土壁やレンガ積み、そして石積みとも違う、まったく新しい雰囲気です。土の素朴な温かさと石の冷たい硬質感とを併せ持った独特の雰囲気です。そして、その壁から天井へと続くシームレスな一体構造がそのまま表現の素材として浮き上がってくるのです。

コンクリートの素材をそのまま仕上げとするコンクリート打ち放しは、その表面を作り出す型枠(コンパネ)によって、その質感は微妙に変わってきます。今もっとも多く使われているのは、水を吸収しないように表面に塗装を施された「オーバーレイ」と呼ばれたりする塗装合板です。この合板によって、コンクリートの表面は滑らかに仕上がるのです。コンクリート打設後数日してコンパネをはずすと、未だ生乾きのその表面はどんよりと黒ずんでいて、ヌメッとした光沢があります。それは磨き上げた御影石というより、まるで作りたての羊カンのような肌合いです。まさに「現場での手作り」といった感じです。そして、この表面に型枠を組み上げるための金物の痕跡(セパ穴)が規則正しく並び、現在多くの人が認める「コンクリート打ち放し」の雰囲気を作り出しているのです。

「コンクリート打ち放し」はまるで倉庫のようで安っぽい。昔は多くの人がそう言って、打ち放しを毛嫌いしていました。しかし今では「打ち放し風クロス」なるものもあります。こんな究極のニセモノが出現する程、「コンクリート打ち放し」も市民権を得たという事でしょう。

TO

素朴なコンクリート (5)2015.04.22

コンクリートは現代の建築構造に欠かせない重要な材料ですが、デザインの側面においても重要な役目を担ってきました。

型枠に流し込んで作られるコンクリートは、その型枠の形によって様々な形態にする事が可能です。力学的法則からは開放されませんので、その重さの制約は受けていますが、三角であれ丸であれ、色々な形の建物が鉄筋コンクリート構造によって作られてきました。ただ、それらの形態のほとんどは、コンクリートが出来る以前から、木造や組積造によって表現されていました。決してコンクリートが作った「新しい形」という訳ではないのです。むしろ、コンクリートが作った「新しい形」と呼ぶにふさわしいのは「四角い箱」と言えるかもしれません。原理的には継ぎ目のないシームレスな構造であるコンクリートは、壁から屋根まで一体に作る事が可能です。そのため防水性が高まり、「陸屋根」と呼ばれる平らな屋根が可能となったのです。昔から一部の地域では陸屋根の建物はありましたし、鉄骨や木造でも陸屋根は作られています。ただ、コンクリートのこの形はより理に適っていると言えるでしょう。

もちろん、「四角い箱」が全世界に広まったのは、その形が持つシンプルな普遍的な美しさを、この時代の美意識が欲した結果だったかもしれません。ただ、そこにこのシームレスなコンクリートの特性が大きく関わっていたのも事実なのです。

TO

よろこちゃん
夜の珍客2015.04.19

先日のお風呂上りの事、ふと見上げると廊下の天井にヤモリの子どもが張り付いていました。

怖がる母を尻目に息子は大喜び、父にヤモリを捕まえてもらい、自分の手の中で大事そうに眺めていました。名前は『よろこちゃん』、息子が名付けましたが、由来は定かではありません。就寝時間になり、一緒に寝ると言い出し、困ってしまいました。

母『よろこちゃん、お母さんと寝たいんじゃない?』 同情を誘う作戦です。ひとまず、お母さんのところへ帰してあげて、また明日遊ぼうと提案し、息子も納得。蓋のないビンによろこちゃんを入れて外に出してやりました。

翌日、朝起きると布団から飛び起き一目散によろこちゃんの所在を確かめ、いない事がわかると、目に大粒の涙をためて、声も出さずにはらはらと流していました。そんなに思い入れがあったとは、、、『また遊びに来てくれるよ』と、慰めましたが、その日は、ふと思い出すたびにはらはらと涙を流して『なんで?なんでいなくなっちゃったの?』と、繰り返していました。

大丈夫。2階のトイレの換気扇に防虫網が付いていないから、これからの季節、いくらでも遊びに来てくれるよ。と純真な心の息子とは対象に溜め息交じりの母でした。

素朴なコンクリート (4)2015.04.16

鉄筋コンクリート構造はその施工方法においても素朴な構造と言えます。

この構造はコンクリートを型枠と呼ばれる鋳型に流し込んで形作られますが、その鋳型は一つ一つの現場で型枠大工さんという職人さんによって、手作業で作られているのです。もちろん、それを補強する鉄筋も手作業によって組まれています。多くの産業が工場での大量生産という近代化が行われる中、この構造だけは未だに手工業なのです。

建造物はその土地、土地に固定された巨大な構築物です。そのため、全ての工程を工場での大量生産のように近代化する事は当然困難です。ただ、鉄骨やプレファブは構造部材そのものは工場で加工され、現場で組み立てられます。在来工法の木造でさへ、構造部材のほとんどがプレカットと呼ばれる工場での先行加工によって作られています。ただ、鉄筋コンクリート構造だけはその構造の特性のため、生産工程の重要な部分のほとんどが現場で行われているのです。昔より進歩したのは、コンクリートを現場で捏ねていたのを工場で行うようになった事くらいでしょうか。

ただ、このハンドメイドのような方法で作られたコンクリートだからこそ、ひとつひとつの現場で微妙に違う独特の表情を作り出せるのです。僕の自邸はウレタンを吹き付けたコンクリート打ち放しです。壁面の一部には、コンクリートの流し込み不良等による質感の違う部分が出来ています。通常は打ち放しに合う補修を行うところですが、僕はこれを「味」と思い、敢えて補修をしませんでした。ハンドメイドだからこそ生じる唯一無二の「美」と感じたのです。もちろん、クライアントの住宅だったら、そんな訳にはいかなかったかもしれませんが...

コルビュジェのラ・トゥーレット修道院の階段室には台形の窓があります。これは本来矩形であるべきものがコンクリート打設時に変形したものです。コルビュジェはこの窓の上に「人間の手がここを通った」という銘を入れたがっていたそうです。

素朴なコンクリートだからこそ生じる偶然の「美」を、この大建築家もこやなく愛していたのかもしれません。

TO

 

素朴なコンクリート (3)2015.04.13

コンクリートを鉄で補強したものが鉄筋コンクリート構造ですが、日本の土壁も同じような構造をしています。

鉄の代わりに竹や木を格子状に組み、それに土を塗り込んでいるのです。土を竹で補強した構造にになっていますので、「鉄筋コンクリート構造」ならぬ「竹筋土構造」といったところでしょうか。強度的には「鉄筋コンクリート構造」にはとうていかないませんが、調湿性に優れ、製造や解体にエネルギーをほとんど使わないこの構造は、究極のエコ構造とも言えます。

そして、このふたつの中間に「竹筋コンクリート構造」というものもあります。鉄の代わりに竹でコンクリートを補強した構造です。このウソのような構造で、鉄不足の戦時中には数多くの建造物が作られました。全ての鉄が砲弾に変わろうとした狂気の時代、無尽蔵に生えてくる竹は大変魅力的な材料だったのです。しかし、一見ヤケクソに思えるこの構造も、実は大正時代から既に研究されていました。「竹筋コンクリート」なる本も戦時中に刊行され、その理論的体系も確立されたのです。思えば、「ごちそうさん」の中で「通天閣」が「竹筋コンクリート」の事を話していたような気がします.....

竹で補強されていようが、鉄で補強されていようが、成分的には土や石を固めた構造ですので、コンクリート (CONCRETE=固まる)(混凝土)構造はやはり、大変素朴な構造と言えるでしょう。

TO

素朴なコンクリート (2)2015.04.10

コンクリートに鉄の棒を入れて補強したものが鉄筋コンクリートです。

押しつぶされるのには強いコンクリートも引っ張る力には弱く、それを鉄の棒(鉄筋)で補った訳です。この二つの材料の関係は二つの幸運な性質によって、より強固なものとなりました。

ひとつは 「鉄とコンクリートの熱膨張率がほぼ等しい」 という性質です。つまり、温度変化によって鉄とコンクリートは同じように伸び縮みするのです。線路のレールが熱膨張で歪むのを防ぐため、ジョイント部分にわずかに隙間を作っているのをご存知な方も多いと思います。「熱くなれば鉄は延びる。」それは感覚的にも理解できます。ただ、それと同じくらいコンクリートも伸びているとは、なかなか信じられない気もします。しかし、同じように伸び縮みしているからこそ、分離せずに一体となっていられるのです。

そして、もうひとつ重要な事は 「コンクリートがアルカリ性である」  という性質です。実際は長い年月を掛けて少しづつ中性化していくのですが、これによって鉄が錆びずにいられるのです。鉄筋が錆びれば体積も膨張し、コンクリートと分離し、更にはそれを破壊さえしてしまいますので、錆びない事は大変重要なことなのです。

ふたつの性質によってコンクリートと鉄は強固に結びつきました。土と石から出来た素朴なコンクリートは、鉄と出会う事によって鉄筋コンクリートとなり、飛躍的にその性能をグレードアップさせたのです。

TO

 

素朴なコンクリート (1)2015.04.08

コンクリートは鉄とともに現代の建築を成立させた重要な材料です。

粘土と石灰を焼成して出来る粉がセメントです。この粉に水を混ぜると硬く固まります。これに砂を混ぜたものがモルタルです。そして、さらに砂利を混ぜるとコンクリートになります。

今とまったく同じだった訳ではありませんが、固まる材料としてのセメントは、エジプトやギリシャの時代から使われていました。これもまた土から出来るレンガや、石などの接着剤として使われていたのです。身近にある土や石を固めて建物を作るのは、昔の人達にとってはごく自然な事です。これらを使った建物は世界中のいたるところで見られ、どこの国でも同じような雰囲気をまとっています。そして、そのプリミティブな構造に同じような「なつかしさ」を感じてしまいます。

考えてみれば、コンクリートも土や石から出来ていますので、同じような素朴な材料と言えるのかもしれません。

TO

お祭り
春祭り2015.04.04

今日は町内のお祭りで、子ども神輿がありました。

天気予報では連日雨の予報でしたが、午前中は雲もなく晴れてお祭り日和でした。参加した子どもは80人。お神輿は3台ありました。息子は低学年用のドラえもんのお神輿に結んである紐を手にして『わっしょい!わっしょい!』と、声を張り上げ頑張っていました。途中、泣いたり、抱っこしたりとついて歩く親は大変でしたが、最後にご褒美のお菓子をもらって、誇らしげに見せてくれて、私も頑張った甲斐があったわと嬉しくなりました。

子どもの頃、私もお神輿を担いだ時を思い出しながら、桜の花びらが舞う中で心地よい時間を楽しみました。

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設計と施工 (4)2015.04.03

5 設計事務所に頼む

この方法を選ばれた方が僕の事務所のお客さんになるわけです。

実は一口に設計事務所といっても、様々な仕事の業態があります。僕のところのように、住宅を望まれる個人の方から、直接仕事の依頼を受けるところばかりではありません。前にもお話しましたが、建設会社の下請けとして設計図を書いたり、確認申請業務だけを行ったり、同業者の手伝いをしたり、と様々です。ここでは僕のところのような設計事務所を念頭に、お話してみたいと思います。

そのメリットは何といっても、優秀な設計事務所であれば、設計の質の高い建物を望める事でしょう。前にもお話したように、設計者は設計する事が大好きです。よりレベルの高い建築を創るために努力は惜しまないのです。お金を度外視して、そこに可能な限りの時間を掛ける人がほとんどでしょう。そして、そこに質の高い建築が生まれてくるのです。

そして二つ目のメリットは、施工やコストに関して中立性の高いチェックが行われる事です。それらに対する知識は、若く未熟な設計者では経験豊かな現場監督にはとうてい歯が立ちません。それでも、その中立性は揺るぎないものなのです。独立性の高い善良な設計者であれば、多少未熟であったとしても、その存在は大きな意味を持っているのです。

ただ、この方法にもデメリットはあります。中でも一番大きな問題は、やはり、価格確定にともなうトラブルのリスクでしょう。もちろん、工事期間中や完成後も様々なトラブルは発生します。「塗装が汚い。床鳴りがする。雨が漏れる。傷がある。」 といった施工不良によるものや、「天井が低い。廊下が狭い。収納が少ない。」 といった設計不備や説明不足によるもの等々。様々な不満が生じる可能性があります。僕のところでは今のところありませんが、それらの問題が大きなトラブルに発展したケースを他の事務所から聞く事があります。ただ、これらの問題は建売住宅を購入する以外、どんな場合も契約時には現物がないわけですから、同じように起きる可能性はあるわけです。

しかし、価格確定に関するトラブルは、設計事務所に依頼するという方法そのものが持つ特徴的なリスクといえるでしょう。つまり、価格は実施図面という詳しい図面が出来た後に、まったく他者である施工会社が見積もりをして初めて確定するのです。そのため、そこに予算オーバーという大きな問題が生じる可能性があるのです。これもまた僕の事務所ではトラブルになった事はありませんが、経験未熟な設計者が起こしやすい問題のひとつです。

ほとんどの設計士は良心的で、より良い建築を作ろうと努力していると思います。ただ、その能力や経験不足によるトラブルが発生しているのも事実なのです。

今までお話した1から5までの比較は非常に観念的なものです。建売業者、ハウスメーカー、大工、建設会社、設計事務所、現実にはこれらの業種全てに様々な能力の会社や個人が存在していますので、これらを単純に比較する事はできないでしょう。どこに依頼するか決める際の、ちょっとした参考程度にしていただければ幸いです。

家は普通の人にとっては、一生に一度の大きな買い物です。新車を買う時は誰でもカタログを見ながら、納得いくまで思い悩むはずです。家の価格は車とは一桁違います。車の十倍ぐらい、じっくり検討してみてください。

TO

 

 

 

 

 

 

 

一級建築士事務所 内川建築設計室 岐阜・愛知・三重を中心に夫婦で建築設計事務所を営んでいます。