建物の寿命 (5)2015.07.30

鉄骨造の構造的な限界年数はどれくらいでしょうか。

これについても、やはり、はっきりとした事は言えません。鉄そのものは水分さへ防げば、半永久的に長持ちします。雨水の浸入を防ぎ、防錆処理が完璧であれば、ALC版などの壁そのものは別として、骨組みである鉄骨そのものはいくらでも長持ちするはずです。しかし、現実はそうでもありません。実際、財務省の減価償却資産の耐用年数表によると、住宅ではRC造47年、木造22年のところ、ある鉄骨造は19年となっています。ある鉄骨造とは、鉄骨の肉厚が3ミリ以下の建物の事です。ちなみに3~4ミリは27年、4ミリ以上は34年となっています。この数値は平均寿命などとは違い、建物の構造別の耐用年数をある方法で推定して出したもののようです。この数値が現実とかけ離れたものである事はすぐにわかりますが、肉厚3ミリ以下の鉄骨造が木造よりも長持ちしないと判断されている事は確かなのです。

以前、鉄骨造のリノベーションを手掛けた折、外壁下地の鉄骨の悲惨な状態を目の当たりにした事があります。使われていたCチャン(C型の軽量鉄骨。正式名リップ溝形鋼)が数箇所部分的に消失していたのです。つまり、錆びてボロボロになり、細かくなって下へ落ちていたのです。ほとんどの部分は無傷で、あっても表面的な錆程度でしたが、ごく一部がほんとうにひどい状態だったのです。もしちょっとした地震が起きていれば、外壁の一部が落下していたのは間違いないでしょう。原因はもちろん雨水の浸入と思われますが、内部結露も鉄骨にとっては大きな脅威となります。ここで使われていたCチャンは厚みが1.6ミリか2.3ミリのものだったと思いますが、薄い鉄骨は錆び始めるとすぐにこんな状態になる危険性があるのです。耐用年数表の19年という数字も、ある意味うなずける数字とも言えそうです。

ただ、最近は防錆処理の質も格段にアップしていますので、昔のような事はないでしょう。まして、重量鉄骨のような肉厚の厚いものを骨組みに使っていれば、なおさらです。とは言っても、鉄骨の最大の敵が水分であることは間違いありません。これによって鉄骨造の構造的限界年数は大きく減じられてしまうのです。

TO

 

 

 

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長良川花火大会&鵜飼2015.07.26

土曜日に長良川の花火大会に家族で行ってきました。
これからの季節、岐阜や周辺地域では毎週末毎にどこかの川で花火が上がります。私達は会場に足を運んだり、家の屋上から遠花火を眺めたりと、この時期を毎年楽しみにしています。今回は知り合いの方のお誘いで、なんと鵜飼の屋形船から花火を観賞する事になりまた。私は岐阜生まれの岐阜育ちではありますが、鵜飼観覧船に乗るのは始めてです。嬉しくて、この日は昼過ぎには会場付近に到着し、長良川沿いを観光する事にしました。
長良橋から鵜飼ミュージアムへ向かう途中に鵜匠さんのお宅を発見。(屋号の表札が立っていて、わかります。) 先日、NHKで長良川鵜飼の特集番組を見ていた私と息子は、鵜匠さんと鵜が一緒に住んでいる事は勉強済みだったので、庭先に鵜がいないかと門の隙間から覗き見。すると喫茶店が併設されていて庭に面しています、、、これはと思い入ってみると、喫茶店から鵜匠宅のお庭の様子が一望できる様になっていました。テレビで特集番組を見ていた息子は『あーくんも鵜と一緒に住みたい。飼う。』と仕切りに言っていた程だったので大喜びです。写真は庭先に出て、鵜を観察していた時の様子です。写っていませんが、数十匹の鵜と猫2匹が住んでいました。
夕方には学生時代の友人が大阪から家族で花火見物に来てくれて、数十分ですが、再会を果たせてとても嬉しかったです。彼女にそっくりの次女ちゃん。旦那さんにそっくりの長女ちゃん。お二人を程よく合わせたような長男くん。感慨深いものがありました。お互い母になりましたね。
乗船時間になり、対岸の見物客や屋台の賑わいを眺めながら船が気持ち良く進みます。暗くなると花火と鵜飼の始まりです。花火に気をとられていると鵜舟があっという間に前を通り過ぎてしまいます。実に忙しい。。。とはいえ、間近で見る鵜飼はスピード感があって迫力がありました。闇に溶けるような装束を身に纏い、舟の先端で真っ赤なかがり火の火の粉をあびながら、水に濡れて黒光りする鵜の群れを操る姿は、さながら魔法使いのよう。それほどまでに幻想的でした。

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建物の寿命 (4)2015.07.15

それでは、RC造の構造的な限界は何年ぐらいなのでしょうか。

結論から言えば、はっきりとした事は言えないという事です。中性化した部分にある鉄筋が錆びるのは、そこに酸素と水分があるからですが、それらがどれだけそこに供給されるかは、コンクリートの状態やそこの環境によって大きく変わるのです。中性化が早く進行すると言われる室内側にクラックが入っていても、水分の供給は少ないため、錆の進行も遅いでしょう。また、外部では中性化が進んでいなくても、クラックからの大量の雨水の浸入によって錆が大きく進行する事も考えられます。そして、60年と言われているコンクリートの中性化が鉄筋まで進む時間も、その表面の仕上げによって大きく変わるのです。例えばタイル張りをすれば10ミリ程度かぶり厚(鉄筋までのコンクリートの厚み)が厚くなったと考えられるため、鉄筋まで中性化が進むのには100年以上掛かることになります。(これは中性化の厚みは経過した時間の平方根に比例するため、1センチ厚くなっても大きく時間が延びるためです。)

話がどんどん細かくなってしまったので、この辺でまとめてしまいます。

今までの話はRC造の構造的な限界年数といっても、コンクリートの中性化との関係についてだけでした。しかし、実際のコンクリートの劣化速度を決めるのは他にも水セメント比等のコンクリートそのものの質や施工状況、メンテナンスの度合いや立地条件など、様々な要因が関係してきます。ですから、RC造の構造的な限界年数など一概にはわからないのです。ただ、ノーメンテナンスのコンクリート打ち放しに60年住まわれた方は、ちょっと注意が必要かもしれません。

TO

 

 

建物の寿命 (3)2015.07.10

前に、「コンクリートは50年持つか。」「500年持つコンクリート」等、コンクリートの耐久性について少し触れた事がありますが、実際RC造は構造的にどれだけ持つのでしょうか。

RC造の構造的な耐久性を語る時、一番良く触れられるのは中性化の問題です。内部の鉄筋を錆びさせないアルカリ性のコンクリートが大気中の二酸化炭素で徐々に中性化し、鉄筋が錆び、コンクリートとの付着力が下がったり、錆びに拠る膨張でコンクリートが爆裂して強度が落ちる。これが中性化による強度低下の仕組みです。もちろんクラック等があれば進行も早いですが、それらがなくても確実に表面から中性化は進んでいくのです。

鉄筋はコンクリートの表面からおおよそ30ミリ程度のところに入っています。この付近まで中性化が進行するのに掛かる時間は一般的なコンクリートでほぼ60年と言われています。これをもって、RC造の寿命は60年とされる事もありますが、これが構造的な限界年数という事でもありません。何故ならコンクリートが中性化したからといって、すぐに鉄筋が錆び始めるわけではありません。そして、中性化したコンクリートはそのためだけで強度が落ちる訳ではないのです。

中性化によって言われている寿命60年というのはRC造の賞味期限のようなものかもしれません。本来コンクリートが持っているアルカリ性という優れた機能が失われ、ちょっとした事で鉄筋が錆び始める、そんな状態になるまでの時間を表しているのです。

TO

建物の寿命 (2)2015.07.06

「建物の平均寿命が~年。」と言われる時、それは平均的に建物がどれだけ物理的に長持ちするのか、どれだけ安全に住み続ける事が可能なのか、その年数を表した数字ではありません。構造的に問題がなくても、様々な理由で壊されていく建物の平均的な築年数を表しているのです。どれだけ住めるかではなく、これだけ住みましたという結果の数字なのです。サイクル年数や減価償却耐用年数なども算定方法は違っても、決して建物の構造的な限界の耐久年数を表した数字ではないのです。日本の建物の平均寿命が短いのは欧米よりも早く建物を壊してしまうからなのです。

何故、そうなのでしょうか。もちろん、日本の住宅の構造的な(物理的な)質の悪さが大きな原因のひとつであった事は事実でしょう。しかし、スクラップ&ビルドを良しとした高度成長期の価値観や核家族化等、住宅の物理的な問題とは別の要因も大きく関係していると思われるのです。ある調査によると、住宅は小さいほどその平均寿命が短いそうです。つまり小さいものは新しいニーズに応えられず、早く建て替えられる可能性が高いのです。日本の住宅のサイクル年数の30年は人の世代交代のサイクルでもあります。子供が出来、ローンを組み家を建てる。そして、30年後にその子供が再び家を建てる時、人は考えます。「改造して2世帯住宅にするために、水廻りや外部を直すと結構お金が掛かるし、建て替えようか。それとも新たに家を建てて、同居するか別居するか。別居なら、親は手間の掛からないマンションにでも引っ越してもらったほうが良いかもしれない。」こうして古い家はその生涯を終わらされてしまうのです。こんな30年サイクルのスクラップ&ビルドは、真逆な価値観による伊勢の式年遷宮も思い出させてしまい、ちょっと複雑な気持ちになります。

いずれにしても、建物に手を加えながら永く住み続ける、そんな欧米の遣り方(昔の日本の遣り方)が戦後の日本では行われていないという事なのでしょう。ただ、これからはどんどん新築率が下がりリノベーションが増え、建物の平均寿命が延びていくのは間違いないでしょう。

TO

 

 

 

一級建築士事務所 内川建築設計室 岐阜・愛知・三重を中心に夫婦で建築設計事務所を営んでいます。