コンクリートは現代の建築構造に欠かせない重要な材料ですが、デザインの側面においても重要な役目を担ってきました。
型枠に流し込んで作られるコンクリートは、その型枠の形によって様々な形態にする事が可能です。力学的法則からは開放されませんので、その重さの制約は受けていますが、三角であれ丸であれ、色々な形の建物が鉄筋コンクリート構造によって作られてきました。ただ、それらの形態のほとんどは、コンクリートが出来る以前から、木造や組積造によって表現されていました。決してコンクリートが作った「新しい形」という訳ではないのです。むしろ、コンクリートが作った「新しい形」と呼ぶにふさわしいのは「四角い箱」と言えるかもしれません。原理的には継ぎ目のないシームレスな構造であるコンクリートは、壁から屋根まで一体に作る事が可能です。そのため防水性が高まり、「陸屋根」と呼ばれる平らな屋根が可能となったのです。昔から一部の地域では陸屋根の建物はありましたし、鉄骨や木造でも陸屋根は作られています。ただ、コンクリートのこの形はより理に適っていると言えるでしょう。
もちろん、「四角い箱」が全世界に広まったのは、その形が持つシンプルな普遍的な美しさを、この時代の美意識が欲した結果だったかもしれません。ただ、そこにこのシームレスなコンクリートの特性が大きく関わっていたのも事実なのです。
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