デザインの側面において、コンクリートが成し得たもうひとつの功績は、仕上げ材としての「打ち放しコンクリート」という新しい素材を作った事でしょう。
コンクリートは土と石から出来ていますが、その表情は土壁やレンガ積み、そして石積みとも違う、まったく新しい雰囲気です。土の素朴な温かさと石の冷たい硬質感とを併せ持った独特の雰囲気です。そして、その壁から天井へと続くシームレスな一体構造がそのまま表現の素材として浮き上がってくるのです。
コンクリートの素材をそのまま仕上げとするコンクリート打ち放しは、その表面を作り出す型枠(コンパネ)によって、その質感は微妙に変わってきます。今もっとも多く使われているのは、水を吸収しないように表面に塗装を施された「オーバーレイ」と呼ばれたりする塗装合板です。この合板によって、コンクリートの表面は滑らかに仕上がるのです。コンクリート打設後数日してコンパネをはずすと、未だ生乾きのその表面はどんよりと黒ずんでいて、ヌメッとした光沢があります。それは磨き上げた御影石というより、まるで作りたての羊カンのような肌合いです。まさに「現場での手作り」といった感じです。そして、この表面に型枠を組み上げるための金物の痕跡(セパ穴)が規則正しく並び、現在多くの人が認める「コンクリート打ち放し」の雰囲気を作り出しているのです。
「コンクリート打ち放し」はまるで倉庫のようで安っぽい。昔は多くの人がそう言って、打ち放しを毛嫌いしていました。しかし今では「打ち放し風クロス」なるものもあります。こんな究極のニセモノが出現する程、「コンクリート打ち放し」も市民権を得たという事でしょう。
TO