素朴なコンクリート (9)

鉄筋コンクリート造(RC造)には断熱性の他にもいくつか欠点があります。

クラック等による漏水、中性化による劣化、鉄筋の錆などによる爆裂、結露のし易さ、コンクリート打設不良のリスク等々。これらの欠点は断熱性の悪さも含め、適切な対処によってある程度は克服できます。ただ、現場ごとに手作りで作られるRC造は工期が長く、生産や解体にコストが掛かり、今求められている低炭素化住宅とは間逆な建物といえます。そして、その見た目からコンクリートは石のように半永久的に長持ちするようなイメージを持たれていますが、実際は違います。「コンクリートは50年持つか」そんな議論もされている程です。これは特に高度成長期の劣悪なコンクリートについて言われている事ですが、一般のRC造でもその寿命は決して長くないように思います。実際の建物はそのほとんどが構造の物理的な寿命以前に他の理由で壊されてしまいますので、RC造の物理的な平均寿命もわかっていません。ただ、数千年の石造や理想的な状態なら千年持つであろう木造に比べ、RC造がそれほど長持ちするとはとうてい考えられません。コンクリートの性能を高め500年以上の寿命を持たせる、そんな研究も大手ゼネコンなどでは行われているようですが、今現在の標準的な仕様では、そこまでの長寿命はなかなか期待できないでしょう。

RC造の歴史は浅く、様々な問題を抱えています。こんな構造が将来、建築の主役の一人として長く生き延びていけるのかどうか、今の時点ではわかりません。ただ、現場ごとに手作りでつくられるコンクリートが大変魅力的な材料である事は変わりません。そして、土と石から出来たそんな素朴なコンクリートが、現代建築に大きな影響をもたらした素材である事も、紛れもない事実なのです。

TO