水平の棟木を支えるテントの支柱のような棟持柱は、室内の中心軸上にあるので、ちょっと邪魔です。そして、大きな建物を建てようとすれば、棟持柱はどんどん大きなものが必要になってきます。そのため、この棟持柱は建築の歴史から少しずつ消えていくのです。
しかし、神社建築などでは今もそれを見る事ができます。特に伊勢神宮の外部に飛び出した独立棟持柱は有名で、その存在感のある太い柱は大変魅力的です。このめずらしい特徴的な柱を持つ建築形式が何時どうして生まれたか、はっきりとした事はわかりません。独立棟持柱を持った弥生時代の高床式の穀倉がその原型だったとも言われています。穀倉は当然雨水を嫌いますので、妻側(屋根が三角に見える側)の屋根を大きく外に張り出すため棟木を延ばし、それを受ける独立棟持柱が必要になったのです。この穀倉を象徴的に模したのが伊勢神宮の原型と考えれば、めずらしいこの柱の存在もうなずけます。
ただ、伊勢神宮の太さ80センチの巨大な檜の柱は確保するのも大変ですが、運搬や施工も昔から大変な作業だったはずです。それを式年遷宮の度に営々と繰り返し続けた事実は、この柱に対する思いがいかに強かったかを物語っています。
太古の昔から木そのものをご神木として敬ってきた日本人にとって、この巨大な素木(しらき)の柱は中心に建つ神の依り代である心御柱(しんのみはしら)に匹敵するくらい、大変重要なものだったのかもしれません。
TO