この住宅は閑静な住宅地の中の、細い十字路の角に建っています。建物の主要な部分は木造ですが、境界いっぱいに建った道路側の壁は、防音や安全性のためRC造となっています。外観や内部空間に「和」と「モダニズム」という2つのイメージをダブらせたり、中庭や濡縁を作る事によって、外部と内部の境がアイマイになる様にしてあります。
木造部分の外部は錆ずらいガルバリウム鋼板で被われています。これは軒の出のないシンプルな形としたため、外壁に確かな防水性を期待したためです。ちなみに、南側は使い勝手を考え1M程の軒が出ています。また、1階部分のコンクリート壁は昔の倉の壁の様に、発水性を高めた漆喰が塗ってあります。この漆喰は内部の壁にも使われています。スサやコテムラや骨材の砂が浮き出たその表情からは、無機的な白いペンキとは違う、遠い記憶を呼び起こす様ななつかしいヌクモリを感じる事が出来ます。居間の天井は木の構造材をそのままあらわし、床は工事現場で使う杉の足場板を使っています。節まるけのこれらの材料は安価なばかりではなく、きれいな材料とは違う味わいのある表情を室内に与えてくれます。これらの木には植物油の塗料が塗られています。壁の漆喰とともに、体にやさしい住環境を与えてくれます。
すぐれたデザインは時代を超えて人々に感動を与えてくれます。しかし、現代のデザインがどれだけ時を超えていけるかを、今の時点で完全に見極める事は出来ません。ただ、時間とともに味わいの増す優れた材料が、時を超えていく事だけは確かです。