きー機能・機械(1)

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「機能」という言葉は「建築」にとって大変重要な言葉です。

「形態は常に機能に従う」というルイス・サリバンの有名な言葉が象徴する機能主義と呼ばれる考え方は、20世紀の建築界において非常に大きな潮流となったものでした。「住宅は住むための機械である」「装飾は罪悪である」「Less is More」等々、これらの刺激的な言葉とともにこの潮流は全世界を席巻したのです。機能主義とは、単純に言ってしまえば、装飾等の情緒的なものや伝統や様式といった形式的なものではなく、使いやすさ等の現実的な機能を一義的に考えるべきだという合理的な考え方です。ただ、そんな合理性を追求した機能主義の建築にも「美」的に優れたものは多く存在しています。それは無駄な装飾を排除し、要求された機能を合理的に追及した末に得られた純粋な「美」。機能主義の立場からすれば、そんな風にいえるのかもしれません。丹下健三の代々木競技場や東京カテドラル等の美しさはその好例と言えるでしょう。しかし、実際にはそれらの建築の美しさは、合理性の追求の帰結というより、その設計者の好みや審美眼といった非常に主観的・情緒的なものによって決定づけられていると思います。一つの建築が感性を排除した合理的なプロセスによって、たった一つの形に帰結することなどは決してないのです。個人の感性がそこに働くからこそ、一つの形に帰結することができるのです。

機能主義とは装飾や様式に魅力を感じなくなった建築家が無装飾の構成的な建築に新たな「美」を見出し、そこにちょっと屁理屈を付けたもの。そう簡単に言えればいいのですが、実際は多くの機能主義時代の建築家もその時代時代の伝統や様式等、「機能」とは関係のないものとも複雑に関わりながら、その時代の建築を作っていったのです。

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