それでは、RC造の構造的な限界は何年ぐらいなのでしょうか。
結論から言えば、はっきりとした事は言えないという事です。中性化した部分にある鉄筋が錆びるのは、そこに酸素と水分があるからですが、それらがどれだけそこに供給されるかは、コンクリートの状態やそこの環境によって大きく変わるのです。中性化が早く進行すると言われる室内側にクラックが入っていても、水分の供給は少ないため、錆の進行も遅いでしょう。また、外部では中性化が進んでいなくても、クラックからの大量の雨水の浸入によって錆が大きく進行する事も考えられます。そして、60年と言われているコンクリートの中性化が鉄筋まで進む時間も、その表面の仕上げによって大きく変わるのです。例えばタイル張りをすれば10ミリ程度かぶり厚(鉄筋までのコンクリートの厚み)が厚くなったと考えられるため、鉄筋まで中性化が進むのには100年以上掛かることになります。(これは中性化の厚みは経過した時間の平方根に比例するため、1センチ厚くなっても大きく時間が延びるためです。)
話がどんどん細かくなってしまったので、この辺でまとめてしまいます。
今までの話はRC造の構造的な限界年数といっても、コンクリートの中性化との関係についてだけでした。しかし、実際のコンクリートの劣化速度を決めるのは他にも水セメント比等のコンクリートそのものの質や施工状況、メンテナンスの度合いや立地条件など、様々な要因が関係してきます。ですから、RC造の構造的な限界年数など一概にはわからないのです。ただ、ノーメンテナンスのコンクリート打ち放しに60年住まわれた方は、ちょっと注意が必要かもしれません。
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