パンテオンもそうですが、天窓は他の教会にも様々な形で使われています。もちろん、教会の採光装置の多くはゴシックのバラ窓のように壁に設けたものがほとんどですが、天窓のように上から降り注ぐ光は、宗教施設にとって視覚効果的にも大変優れているのです。丹下健三の東京カテドラルやコルビュジェのラ・トォーレット修道院のトップライトはその代表といえるかもしれません。ただ、僕の心に最も深く刻まれているのはイタリアのサン・カルロ・アッレ・クアットロ・フォンターネ聖堂です。
この建築はバロックの巨匠フランチェスコ・ボッロミーニがローマの市街地に作った修道院の小さな附属聖堂です。この聖堂の天井に載った楕円形の光るクーポラの美しさは今も忘れることができません。ここも厳密にいえば、天窓とは言えないかもしれません。天窓=トップライトは屋根に直に開口部を設けそこから光を採り入れますが、ここではドーム状の屋根とそれを支える壁との境から光を採り込んでいるいるのです。つまり、採光のための開口部は水平ではなく垂直になっているのです。今風に言えばハイサイドライトです。ただ、その開口部は下からは見えないため、楕円形のドーム状の天井が宙に浮いているように見えるのです。聖堂内部はこの光る天井からの僅かな反射光だけで照らされているのです。薄暗い聖堂内部に浮かぶ光るクーポラはまさに聖なる天上でした。同じローマにはバチカンとして知られる有名なミケランジェロによるサンピエトロ寺院があります。ここにも同じ形式の光るクーポラがありますが、その内部空間の明るさと巨大さ、精緻な装飾には圧倒されましたが、正直あまり感動はしませんでした。そこは只々明るく巨大な空間、そんな印象だったのです。大天才ミケランジェロを悪く言うつもりは毛頭ありませんが、一鑑賞者としては正直そんな印象だったのです。その分、この小さなボッロミーニの聖堂に感動してしまったのかもしれません。
天窓はその大きさ、位置、光の入れ方等によって、空間に与える効果は様々です。ただ、それが大変重要な光の装置であることは間違いないのです。
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