「ノートルダムのせむし男」で知られたパリの大聖堂が火災にあったのは2019年のことです。火災の現場を遠目に嘆き悲しむパリの人々の映像を、記憶に留める方も少なくないことでしょう。絵に描いたような典型的なゴシックの石の大聖堂が燃えたのです。もちろん燃えたのは木で出来た屋根の一部分で、石で出来た骨組そのものは燃えていません。半年後に消失してしまった木造の首里城とは大きな違いです。
僕が初めてこの大聖堂を見たのは今から30年以上前のことになりますが、火災直後の映像を見ても、その印象は当時のそれと大きな違いはありませんでした。双塔やばら窓、尖塔アーチを持つその骨組、特にフライングバットレスと呼ばれる空中に飛ぶように掛かる石の控え壁の力強さはまったく当時のままです。
肋骨が外部にはみ出したようなこの迫力ある構造は、外部に力強さを表現するためだけのものではなく、内部空間により大きな開口を穿ち、ステンドグラスからの神聖な光を取り込むためのものでもあるのです。若き日にヨーロッパへ行った時、その目的は決してゴシック建築を見るためではありませんでした。ただ、その荘厳で力強い内部空間の光と影に圧倒された記憶は今も忘れることは出来ません。多くの著名な建築家が本物のヨーロッパ建築に圧倒され、それとは違う方向性を模索した理由を理解せざるを得ませんでした。
ノートルダム大聖堂はほぼ5年で修復が完了しました。首里城の復元工事は未だ進行中です。
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