ちー地下空間

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1995年に事務所を開設してから、資材置き場として床下に設けた事以外に地下室を作ったことは一度もありません。地下室は地下水やその湿度対策に手間が掛かり、工事費も地上に建設する場合に比べかなり高額になります。そのため、夏涼しく冬暖かいというメリットはありますが、それをあまり作ることはありませんでした。建築物の高さ制限が厳しい場合や容積率以上に床面積を確保したい場合は地下室も(全体の1/3までの地下室の面積は容積率に算入しないため)有効ですが、デメリットを超える程の必要性は今までなかったのです。2019年のカンヌ国際映画祭でパルムドールを受賞した「パラサイト・半地下の家族」の中でも、地下は劣悪な住環境や貧しさの象徴として描かれていました。ただ、機能的・物理的には問題の多い地下ですが、その内部空間は大変魅力的です。

安藤忠雄の地中美術館や蓮池下の本福寺、中国のヤオトン(窯洞)、厳密には地下ではありませんがガウディのコロニアルグエルのクリプタ(地下聖堂)、善光寺の地下回廊(戒壇巡り)、首都圏外殻放水路、ジェームスタレルのローデンクレーター計画等々...これらの空間は地下だからこそ出来る魅力的な空間です。

地上の喧騒と陽光から隔絶された静寂の宇宙、地下空間にはそんな魅力を感じてしまいます。そういえば、ニュートリノによって宇宙の神秘を探るスーパーカミオカンデも深い地下空間にありますが、ここはなかなか見れそうにありません。

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