土地にどれだけのお金を掛けるか?
土地、建物、外構、家具、税金、登記、引越し等々。これらの総予算の中から土地だけにいくら掛けるか、これはなかなか悩ましい問題です。建築家としては、土地は出来るだけ安く購入し、その分建物にお金を掛けてほしい,そう言いたいところです。
それなら、どんな土地なら安く手に入るのでしょうか。いびつな土地、傾斜地、崖地、狭小地等々。これらは通常のハウスメーカーでは建てづらかったり、外構等に余分な費用が掛かったりして、一般の人からは敬遠されがちです。でもそんな土地でも建築家に頼めば、多くの場合お値打ちにすばらしい家を作る事が可能です。そして、そんな土地は通常より安く手に入ります。
僕の土地も購入当時、坪単価は周辺の半額以下でした。岐阜新聞の不動産広告に「長良川沿い、50坪、450万円、資材置き場向き。」 そんな物件を見つけ、小躍りして土地を見に行きました。その土地は底辺50M高さ8Mの細長い三角形の土地。しかも、上下水道や電柱もなく、公道にも接しず、境界も決まっていませんでした。隣の墓地を整備するため、区画整理した時に出来た余剰地だったのです。「こんな土地は止めたほうがいい。」そんな周囲の意見も聞かず、とにかく長良川沿いに家を建てたい、そんな思いで僕は関係する役所等を訪ねて歩きました。そして、上下水道が引ける事、みなし道路に接道という事で、住宅が建築可能である事を確認したのです。それから測量士に依頼して、周辺部の方々に立ち会ってもらい、境界確定と測量を行いました。そして、格安の土地を手に入れたのです。広告に出ていた450万円という価格は結局900万円になってしまいましたが、それでも単価は周辺の半分以下でした。
土地を購入する時にもうひとつ大事な事は、当然ですが、はっきりと予算の上限を決めておく事です。僕も格安だったとはいえ、当初から二倍になった金額でも即決出来たのは、上限を1000万円と決めていたからです。売主との交渉になった時も、上限をはっきり決めていればスムーズに事を運べますし、気に入った土地を見つけた時は即決できます。「即決できずに良い土地を逃してしまった。」そんな残念な思いをされた方が僕の知り合いにも居られました。即決できる事は結構大事なのです。
そして、これも当然の事ですが、土地は坪単価でなく、土地の価格で選ぶべきです。坪単価が周りより安くてお値打ちだから、予算オーバーでも購入してしまうとか、逆に予算内で気に入った土地でも、坪単価が割高なので二の足を踏んでしまうのはナンセンスです。要は坪単価が周りより高かろうが安かろうが、予算の上限内で一番条件にあった土地を選べば良いのです。
今までのお話は、土地を購入して設計事務所に設計を依頼しよう、そう考える方への一般的なアドバイスです。ハウスメーカーや大工さん、そして小さな工務店に頼もうとしている方は、どんな建物でも建て易いオーソドックスな土地の方が良いでしょう。また、将来の売買等も視野に入れ、資産価値としても考える方は、周りの坪単価も気にした方が良いでしょう。そして、設計事務所に頼もうと考えている方も、崖地や狭小地等はその特殊性によってコストがかさみ、かえって損をする場合もありますので、十分注意が必要です。土地購入前には、設計事務所とよく相談した方が良いでしょう。
写真は僕の自邸の模型です。三角形の敷地の底辺はほぼ50mです。
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